ロックウェル・オートメーション(ROK)|フィジカルAI時代の制御インフラを握る会社

AIバブルがマーケットを席巻していた頃、わたしはひとつの問いを立てました。
「NVDAが上がった。では、次に来るものは何か?」
AIが社会に実装されるとき、それはデジタルの世界だけでは完結しない。
工場の生産ラインが動き、物流センターのロボットが荷物を仕分け、自動車が自律走行する。
物理世界がAIで動く時代が、次のフェーズとして来る。そう気づいたとき、見える景色が変わりました。
フィジカルAIの世界で最初に必要になるのは?
ロボット本体ではありません。それを動かす制御システムです。そこで行き着いたのが、ROK(ロックウェル・オートメーション)でした。
ROKはさよ11の原点といっていい銘柄です。
この会社を知ったことで、「フィジカルAIのインフラを抑える」という投資思想が、はじめて言葉になった気がしています。
現在の保有額は約5,000ドル、平均取得単価は約400ドルです。
ROKとはどんな会社か
ロックウェル・オートメーション(ROK)は、ウィスコンシン州ミルウォーキーに本社を置く、産業用オートメーションとデジタルトランスフォーメーションの世界的リーダーです。世界100カ国以上で約26,000名が働いています。FY2025通期売上高は約84億ドルです。
主力ブランドはAllen-Bradley(制御機器)とFactoryTalk(産業用ソフトウェア)。この2つが世界中の工場に深く組み込まれています。
工場の中に入り込んで、生産ラインそのものを設計・制御・管理するシステムを提供する会社です。GLWやCOHRと同じく、一般的な知名度は高くない。でも製造業に関わる人間なら知らない人はいない。そういう会社です。
事業は3つのセグメントに分かれています。センサーや制御機器を手がける「Intelligent Devices」、産業用ソフトウェアとコントローラを担う「Software & Control」、そして設計・保守・サポートを提供する「Lifecycle Services」です。
この中で、いま特に注目しているのがSoftware & Controlで、AIとの統合が急速に進んでいます。
なぜフィジカルAIに欠かせないのか
AIが社会に実装されるとき、それはソフトウェアだけでは完結しません。
工場のロボットが動き、物流が自律化し、製造ラインが自分で判断して動く。そのすべてに「制御」が必要です。
ROKが長年培ってきたのは、まさにその制御の領域です。
工場の生産ラインがどう動くか、ロボットがどう判断して動くか、センサーからのデータをどう処理して次の動作に繋げるか。その設計・実装・管理がROKの本業です。
わかりやすく言うと、NVDAがAIの「頭脳」なら、ROKはAIの「神経系」です。
どれだけ高性能なチップがあっても、工場のロボットを動かすには制御システムが必要。センサーが拾ったデータを処理して、どのモーターをどう動かすか、どのタイミングで止めるか。その判断と実行を担うのがROKです。
フィジカルAIが普及すればするほど、この神経系の需要は増えます。
工場が新設されるだけでなく、既存の工場がAI対応でアップグレードされるたびに、ROKの出番がくる仕組みです。
「自動化」から「自律化」へ|ROKの経営戦略
ROKがいま経営戦略の核に据えているのが、SDA(Software-Defined Automation)という概念です。
従来の制御システムはハードウェアに依存していました。
機械を変えるたびに制御プログラムを書き直す必要があった。SDAはこれを根本から変えます。ソフトウェアが制御の主役になることで、工場はハードウェアに縛られずに柔軟に動けるようになる。AIをリアルタイムで制御に組み込み、工場が自ら判断して動く世界を目指しています。
ROKのCTOはこの流れを「業界にとってユニークな変曲点」と表現しています。
単なる製品アップデートではなく、制御システムそのものの概念が変わる転換点だということです。
さらにROKはAWS・NVIDIA・Microsoftとの協業も進めています。
2026年4月のハノーバーメッセでは、AIが工場設計のワークフローを自律的に組み上げる「AI-Orchestrated Engineering Workflow」を披露しました。制御の会社が、設計そのものをAIに任せる時代を作ろうとしている。
「自動化(Automation)から自律化(Autonomy)へ」。この言葉がROKの目指す未来を一言で表しています。
直近業績|回復軌道に入った数字
FY2025通期はROKにとって調整の1年でした。
売上高は約84億ドルで前年とほぼ横ばい。一時は各セグメントで前年比マイナスの局面もありました。
ただ、原因は構造的な問題ではありません。コロナ禍に製造業各社が部品・機器を大量発注した反動で、顧客側の在庫消化が進み新規発注が急減——いわゆる在庫調整サイクルです。
ROKに限らず、産業機器メーカー全体を直撃した業界的な問題です。むしろROKはその間も粗利率の改善を続け、FY2021の41%からFY2025には48%まで拡大しています。低迷期にコスト構造を磨いていた、ということです。
そしてその先が明確に変わっています。
Q1 FY2026(2025年10〜12月)の売上高は21億ドルで前年比12%増、オーガニック成長率も10%増。特に注目しているSoftware & Controlセグメントは前年比19%増、オーガニックで17%増と加速しています。EPSは2.75ドルで市場予想を約12%上回りました。
セグメント営業利益率は20.7%と、前年の17.1%から大幅に改善。
CEOのブレイク・モレット氏は「売上・利益率・EPSのすべてが予想を上回った」と述べ、FY2026通年の調整後EPSガイダンスを11.80ドルに引き上げています。
在庫調整という嵐を越えて、数字は明確に上を向いています。
わたしの投資判断基準
わたしの投資哲学についてはこちらの記事で書いています。
その基準に照らして、ROKは未来に保有する理由が明確にある銘柄です。
AIが社会に実装されるとき、制御システムは必ず必要になる。
ロボットが増えるほど、工場がAI化するほど、ROKの出番は増えます。この構造が変わらない限り、保有し続ける理由があります。
現在のPERは約40倍で推移しており、割高に見えるかもしれません。
ただ、過去に紹介した「さよ11」銘柄と同じく、一切気にしていません。在庫調整という業界全体の嵐を越えて、粗利率を改善し続けた会社です。SDAという次世代の制御概念を持ち、NVIDIA・AWS・Microsoftと協業しながら「自律化」という新市場を切り開こうとしている。これだけの理由があれば、PERは判断の軸になりません。
逆に売りを考えるとしたら、制御システムそのものが不要になるような技術革新が起きた場合です。ただ、フィジカルAIが普及するほど制御の需要は増える構造を考えると、その可能性は現状では見えません。
現在の平均取得単価は約400ドル。さよ11の原点として、長期保有を続けます。
まとめ
ロックウェル・オートメーション(ROK)は、工場の制御システムを設計・実装・管理する会社です。フィジカルAIの「神経系」として、AIが物理世界に実装されるほどその需要は増えていきます。
「自動化から自律化へ」というROK自身の言葉が、この会社の向かう先を表しています。SDAという概念のもと、NVIDIA・AWS・Microsoftと協業しながら、工場が自ら判断して動く世界を作ろうとしている。
FY2025の低迷は在庫調整という業界全体の問題でした。構造的な問題ではなく、その間も粗利率を改善し続けた。数字はすでに回復軌道に入っています。
わたしが「さよ11」を組んだとき、ROKはその原点にあった銘柄です。
「NVDAの次に来るものは何か」という問いへの、ひとつの答えがROKでした。この構造が変わらない限り、保有し続けます。
さよ11の全体像については、こちらの記事をご覧ください。

次回も別銘柄の個別分析を書いていきます。




