キーサイト・テクノロジーズ(KEYS)|KLAでもアドバンテストでもない、フィジカルAI時代の計測インフラ

フィジカルAIのインフラ銘柄を調べていくなかで、KEYSは最初から「外せない」と感じた銘柄のひとつです。ただ正直に言うと、なぜ外せないのかを人に説明するのが少し難しい会社でもあります。
日本ではアドバンテスト(6857)の株価急騰が話題になりました。米国ではKLA(KLAC)も半導体検査装置の代表銘柄として広く知られています。
半導体テスト・検査への注目が高まり、多くの投資家がその恩恵に気づき始めた。でもKEYSはまだ地味なままです。
その理由はシンプルで、KEYSが担う役割が「見えにくい場所」にあるからです。
製造ラインの中で働くわけでも、完成品を売るわけでもない。設計から製造、通信インフラ、宇宙まで、電子システムが「正しく動くかどうか」を測る会社です。
わたしは現在KEYSを約5000ドル保有しており、平均取得単価は285ドル前後です。さよ11の設計・検証層の中核として、長期的に期待している銘柄です。
KEYSとはどんな会社か
キーサイト・テクノロジーズは、カリフォルニア州サンタローザに本社を置く電子計測・テスト機器の世界的大手です。もともとHP(ヒューレット・パッカード)の計測部門として生まれ、2014年にアジレント・テクノロジーズから独立しました。売上高は約54億ドル(2025年度実績)です。
事業は大きく2つに分かれています。通信・宇宙・防衛向けの「CSG」と、電子工業・半導体・自動車向けの「EISG」です。
顧客は5G/6G通信、半導体、AI、宇宙・防衛、自動車・EV、量子コンピューティングと幅広く、特定の市場に依存しない構造を持っています。
TDYと同様に、エンドユーザ向けの完成品を売る会社ではありません。エンジニアや研究者が「この電子システムは正しく動くか」を確かめるための計測機器・ソフトウェア・サービスを提供する会社です。
あまり目立ちませんが、新しい技術が生まれるたびに必ず必要とされる。そこがKEYSの強みです。
KLAやアドバンテストとどう違うのか
同じ「計測・検査」の文脈で語られることが多いですが、KLA(KLAC)・アドバンテスト(6857)・KEYSは役割がそれぞれ違います。
KLAは半導体の製造工程中にウェーハの欠陥を検査する会社です。工場の製造ラインの中に入り込み、不良品を弾く役割を担っています。アドバンテストは完成した半導体チップが正しく動くかをテストする装置メーカーです。どちらも「製造」に近い場所で働く会社です。
KEYSはもっと幅広い。設計段階から製造、通信インフラの検証、宇宙・防衛システムのテストまで、電子システムの「開発から展開まで」全工程を支えます。製造ラインの中だけでなく、技術が生まれる最上流から最下流まで関わっている。
言い換えると、KLAとアドバンテストは「半導体工場の中」で働く会社、KEYSは「技術開発の全工程」で働く会社です。守備範囲が根本的に違います。
だから半導体だけでなく、5G/6G・AI・宇宙・自動車と、新しい技術領域が生まれるたびにKEYSの需要が増えていく仕組みになっています。
なぜフィジカルAIに欠かせないのか
フィジカルAIが普及するということは、AIが動かす電子システムが現実世界に爆発的に増えるということです。
ロボット、自動運転車、スマートファクトリー、宇宙衛星。これらはすべて複雑な電子システムの塊です。
そしてシステムが複雑になるほど、「正しく動くかどうか」を確かめる作業は難しくなります。半導体の微細化・集積化が進めば進むほど、計測・検証の精度要求も上がっていく。ここにKEYSの長期的な需要があります。
さらにKEYSには「標準規格の策定に深く関与している」という強みがあります。
次世代通信規格(5G・6Gなど)のルール作りに参加することで、KEYSの計測機器やソフトウェアが事実上の検証標準として使われる構造になる。規格が変わるたびに、KEYSが必要とされます。
TDYが「現実世界を認識する入り口」を担うとすれば、KEYSは「その技術が正しく動くことを証明する会社」です。
フィジカルAIのシステムが複雑になるほど、証明の難易度も上がる。規格が進化するたびに、KEYSの優位性が活きてきます。
直近業績|市場が気づき始めた
2026年Q1、KEYSは市場の予想を大きく上回る決算を発表しました。売上高は前年同期比23%増の16億ドル、Non-GAAP EPSは19%増の2.17ドルです。アナリスト予想を大幅に超え、決算発表翌日に株価は23%急騰、その後も上昇を続けました。
牽引役はCSG(通信・宇宙・防衛)セグメントで、前年比27%増。AIデータセンター向けの需要急増と、航空宇宙・防衛市場の強さが重なりました。EISG(電子工業・半導体・自動車)も前年比15%増と、全市場でそろって二桁成長を達成しています。
特に注目すべきはオーダー(受注)です。受注額は前年比30%増の16.5億ドルで、受注残は過去最高の28億ドルに達しました。売上だけでなく、今後の成長を示す先行指標も強い。
会社側は2026年通期の売上成長率を20%超に上方修正しました。AI・6G・フィジカルAIという複数の成長テーマが重なる局面で、市場がKEYSの価値に気づき始めています。
わたしの投資判断基準
わたしの投資哲学についてはこちらの記事で書いています。その基準に照らして、KEYSは未来に保有する理由が明確にある銘柄です。
半導体の微細化・集積化は今後も進み続けます。フィジカルAIのシステムはさらに複雑になっていく。そのたびに「正しく動くかどうかを証明する」需要は確実に増えていきます。KEYSが担う役割は、技術が進歩するほど大きくなるのです。
アドバンテストやKLAが市場で評価されているのに、KEYSはまだ割安に放置されている局面があった。そこに気づいたとき、わたしは買い始めました。
逆に売りを考えるとしたら、この前提が崩れたときです。KEYSが関与している標準規格の策定から外れた場合、あるいは計測・検証という工程そのものが技術的に不要になるような変化が起きた場合。
ただ現状ではその可能性は低いと見ています。技術が複雑になるほど、証明の難易度は上がる一方だからです。そう簡単に代替できる会社は出てこないとわたしは考えています。
まとめ
キーサイト・テクノロジーズ(KEYS)は、電子システムが「正しく動くかどうか」を証明する会社です。製造ラインの中で働くKLAやアドバンテストとは役割が違い、設計から展開まで技術開発の全工程を支えます。
半導体の微細化、フィジカルAIの普及、5G/6Gの進化。
技術が複雑になるほど、KEYSの役割は大きくなっていく。規格が進化するたびに、KEYSが必要とされる構造です。
2026年Q1の決算でその価値が市場に気づかれ始めています。わたしが買い始めたときはまだ地味な評価でしたが、それでいいと思っていました。目立たない企業に市場が気づく前に仕込むのが株式投資の醍醐味ですよね。
さよ11の全体像については、こちらの記事をご覧ください。

次回も別銘柄の個別分析を書いていきます。





