ナブテスコ(6268)|ロボットの関節を司る、精密減速機の世界王者

THKを調べていて気づいたことがありました。
ロボットが動くには直線運動だけでは足りない。アームが弧を描く、関節が回転する、胴体がひねる。ロボットの動きの多くは「回転」で成り立っている。その回転を精密にコントロールするために必要な部品が、精密減速機です。
モーターは高速で回転しますが、そのままでは力が弱く制御も難しい。精密減速機を通すことで、回転速度を落として力を増幅させ、ロボットの関節を滑らかに精密に動かせるようになります。
そして、この精密減速機で世界シェア60%を持つ会社がナブテスコ。
ナブテスコ自身が企業ブランドとして「うごかす、とめる。」という言葉を使っています。THKが直線運動を担い、ナブテスコが回転運動を精密にコントロールする。この2社でロボットの「動き」が成立すると気づいたとき、迷わず購入を決めました。
ナブテスコとはどんな会社か
ナブテスコ(6268)は、モーションコントロール技術を核に据えた産業機械メーカーです。東証プライム上場、本社は東京。
主力事業は4つのセグメントに分かれています。
精密減速機・ロボット部品を手がける「コンポーネント」、鉄道・航空・船用機器の「トランスポート」、自動ドア・ホームドアの「アクセシビリティ」、そして包装機械の「マニュファクチャリング」です。
一見バラバラに見えますが、すべてに共通するのは「動きをコントロールする」という技術です。新幹線のブレーキ、飛行機の飛行制御装置、駅のホームドア、工場の自動ドア。ナブテスコの技術は人の目に触れにくい場所で社会インフラを支えています。
中でもコア事業が精密減速機です。
産業用ロボットの関節に使われる精密減速機「RVシリーズ」で世界市場の約60%を占めています。自動ドアも国内シェア約60%で世界首位級。それぞれのニッチ領域で圧倒的なポジションを持っています。
2026年12月期の売上高予想は約3,270億円(前期比6.2%増)。精密減速機の需要回復を背景に、業績は明確な回復軌道に入っています。
なぜフィジカルAIに欠かせないのか
フィジカルAIが普及すると、ロボットが増えます。
工場の生産ラインが自律化し、物流センターのロボットが荷物を仕分け、ヒューマノイドが現実世界で動き回る。そのすべてのロボットの関節に、精密減速機が使われます。
ロボット1台に精密減速機は複数個使われます。ロボットが1台増えるたびに、ナブテスコの精密減速機の需要が増える。ロボットが100万台になれば、100万台分の関節が必要になる。これがさよ11の思想「端末ではなくインフラを抑える」と一致する理由です。
THKと組み合わせると、この構造がより鮮明になります。
THKのLMガイドが直線運動を担い、ナブテスコの精密減速機が回転運動を精密にコントロールする。どちらも「ロボットが動くために必ず必要な部品」です。端末(ロボット本体)がどのメーカーになろうと、その中に必ずこの2社の部品が入っている。
さらに、ナブテスコの精密減速機RVシリーズは、競合の波動歯車減速機と比べて剛性が高く大きな衝撃に耐えられるという特性があります。このため大型の産業用ロボットでは事実上の標準部品になっており、一度採用されると簡単には切り替えられない。参入障壁が極めて高い領域です。
フィジカルAIが普及するほどロボット需要は増えていく。THKとナブテスコ、この2社がその中心にいます。
なぜ今が買い時だったか|在庫調整という一時的要因
わたしがナブテスコを購入したのは、業績が低迷していたタイミングです。
コロナ禍にロボット投資が世界的に急増しました。
工場の自動化需要が一気に膨らみ、精密減速機の注文が殺到しました。ところが、その反動で、2023〜2024年にかけて製造業全体で設備投資が抑制され、精密減速機の需要が急減。顧客側の在庫が積み上がっており、新規発注が止まったのです。
これはROKと同じ在庫調整サイクルです。
ナブテスコに限らず、産業機械メーカー全体を直撃した業界的な問題です。ですが、精密減速機の世界シェア60%という競争優位性は何も変わっていない。市場が業績の見た目だけで売ったというのがわたしの判断でした。
そして在庫調整という嵐を越えて、数字は明確に上を向いています。Q1 2026は売上高16.9%増、営業利益68.3%増と絶好調。2026年12月期の通期予想も上方修正し、営業利益33.6%増を見込んでいます。
取得単価4,250円、現在は約30%の含み益です。在庫調整で売られ、フィジカルAIブームの前に拾うことができたと思っています。
Project 10とSMC|次の成長戦略
ナブテスコは今、単なる業績回復にとどまらない変革を進めています。
ひとつが「Project 10」です。2026年度に営業利益率10%の達成を目標とした全社的な収益改善プログラムです。価格転嫁の徹底、コスト削減、固定費の適正化を進めており、在庫調整で低下した収益性を取り戻すだけでなく、以前より筋肉質な会社に生まれ変わろうとしています。
もうひとつが「SMC(スマートモーションコントロール)」という戦略です。これがより重要だと思っています。
これまでのナブテスコは「部品を売る会社」でした。精密減速機というパッシブなコンポーネントを製造・販売する。しかし、SMCはその概念を根本から変えます。電動化・センサー・ソフトウェア・データ解析を組み合わせて、精密減速機を「状態を監視し、自ら最適化するシステム」に格上げする。部品の供給からソリューションの提供へ。
AIが工場に実装される時代に、ナブテスコの精密減速機がデータを発信し、AIと連携して最適な動きを実現する。
「うごかす、とめる。」という技術が、AIと融合する世界です。
フィジカルAIが普及するほど、この戦略の価値は増していきます。
わたしの投資判断
わたしの投資哲学についてはこちらの記事で書いています。その基準に照らして、ナブテスコは未来に保有する理由が明確にある銘柄です。
フィジカルAIが普及するほどロボットは増え、ロボットが増えるほど精密減速機の需要は増えていく。この構造が変わらない限り、保有し続ける理由があります。さよ11のサテライトとして、THKとセットで長期保有を続けていく予定です。
現在の取得単価は4,250円で100株保有中。現在約30%の含み益になっています。
PERは現在約34倍前後で推移しており、割高に見えるかもしれません。ただ、在庫調整という嵐を越えてQ1 2026は営業利益68.3%増と急回復。Project 10で営業利益率10%達成が目前に迫り、SMCでパッシブな部品からアクティブなシステムへの転換も始まっています。これだけの理由があれば、PERだけでの判断は合理的ではないかもしれません。
逆に売りを考えるとしたら、中国系企業などの台頭でナブテスコのシェアが本格的に侵食され始めた場合です。ただ、30年以上にわたって培ってきた技術力と製造ノウハウは一朝一夕では追いつけるものではないと考えています。
まとめ
ナブテスコ(6268)は、産業用ロボットの関節を司る精密減速機の世界王者です。
世界シェア60%という圧倒的なポジションを持ちながら、在庫調整の影響で業績が低迷していました。
THKが直線運動を担い、ナブテスコが回転運動を精密にコントロールする。この2社でロボットの「動き」が成立します。フィジカルAIが普及するほどロボットは増え、ロボットが増えるほどこの2社の出番は増えていく構造です。
在庫調整という嵐を越え、数字はすでに回復軌道に入っています。
Project 10で収益性を磨きながら、SMCでパッシブな部品からアクティブなシステムへ。
「うごかす、とめる。」という技術が、フィジカルAIと融合していきます。
THKとの比較・セットで読みたい方はこちらの記事もどうぞ。

わたしの投資哲学・銘柄の探し方についてはこちらの記事をご覧ください。






