外貨はどれくらい持つべき?円安時代の正解は「10〜30%」|生活を守る外貨比率の考え方

外貨はどれくらい持つべき?最初に知りたい基礎
円安・物価高が続くいま、「外貨ってどれくらい持つのが正解なんだろう?」と悩む方は少なくありません。
スーパーの食品、ガソリン、電気代──日々の生活コストが上がる一方で、円預金の金利はほとんど動かないまま。
つまり、円の価値は少しずつ目減りしています。
外貨を持つ理由は、為替で儲けたいから」ではなく、円の価値が下がったときに資産と生活を守るためです。
ただ、外貨は多すぎてもリスクになり、少なすぎても効果が出ません。
この記事では、外貨をどれくらい持つとバランスが良いかを、初心者でも判断しやすいように外貨比率の考え方をひとつずつ整理します。
外貨を持つべき理由は「円安耐性をつくること」
外貨を持つ最大の理由は、円だけでは守れないリスクを補うためです。
日本は長く低金利が続き、物価が上がりやすい一方で、円の購買力は下がりやすいという構造があります。
たとえば、
- 1ドル=100円 → 150円 → 海外の商品が50%値上がり
- 食品・エネルギー価格の上昇 → 家計が直撃
- 預金金利はほぼゼロのまま → インフレに追いつかない
円だけで資産を持つということは、「日本の外でも、中でも」円の価値が下がる影響をそのまま受けるということ。
ここに外貨を少し混ぜることで、円安のダメージを自然に和らげられます。
- 円が下がっても、外貨がカバーする
- 資産全体のブレが小さくなる
- 生活コスト上昇のストレスを軽減できる
外貨は、「増やすため」ではなく円が弱くなったときに困らない資産構造をつくるための保険。
まずはこの考え方を前提にすると、外貨比率の判断がとてもシンプルになります。
結論:外貨比率の目安は「10〜30%」が黄金比
外貨をどれくらい持つべきか──その結論は 「10〜30%」が最もバランスが良い という点にあります。
この範囲は、円安・円高のどちらでも生活への影響を抑えつつ、資産全体のブレも大きくなりにくい理想的なラインです。
なぜ10〜30%がちょうど良いのか
外貨比率が高すぎても、低すぎても、「守り」としての効果が十分に発揮されません。
10〜30%という範囲が最適な理由は大きく2つ。
- ボラティリティ(値動き)を吸収しやすい
- 生活コストへの影響を安定させやすい
たとえば外貨が20%あると、急な円安でも外貨が自然にカバーしてくれるため、生活費や資産の目減りを和らげることができます。
50%以上がNGになる理由
外貨比率が50〜70%のように高すぎると、外貨が強いときはプラスでも、円高局面で一気に資産が目減りしやすくなります。
- 円高になると外貨資産がまとめて減る
- 日本円で生活しているため逆の方向に痛みが出る
- 給与も支出も円なので、生活ベースがぶれやすい
つまり、外貨が多すぎるほど生活が円高リスクに弱くなる ということ。
「守り」の目的から外れてしまうため、外貨比率は中庸ラインで抑える方が機能します。
5%では弱すぎる理由
外貨比率が5%以下だと、円安を吸収する力がほとんど働かない という構造があります。
① 為替の影響を相殺できる量が少なすぎる
円が10〜20%動くことは珍しくありませんが、外貨が5%だと、資産全体への影響は 0.5〜1%程度 にしかなりません。
生活コストの上昇(電気・食品など)は年ベースで数%以上になるため、実感できるほどの防衛効果が出ないのが実際です。
② 通貨分散は「10%超」から機能し始める
資産運用の世界では、通貨分散やヘッジ効果は 10%を超えて初めて意味を持つ とされていて、5%は振れ幅に埋もれてしまう量です。
✔ 結論|最低ラインは10%
- 5%は「持っているけれど守れていない」状態
- 10%を超えると円安の影響を実感レベルで中和できる
- 生活の安定を感じるのは20%前後から
外貨比率は、10〜30%の範囲で調整するのが最も現実的です。
まとめ:ベストは10〜30%の中で調整すること
- 外貨が多すぎると円高で痛む
- 外貨が少なすぎると円安で守れない
- 10〜30%が生活と資産の中庸ライン
まずはこの範囲を基準にしつつ、自分の状況に合わせて少しずつ調整するのが最も現実的です。
外貨比率を決めるための3つの判断基準
外貨比率は「10〜30%」が基本の目安ですが、実際にどの割合にするかは人によって変わります。
その判断に使えるのが次の3つの視点です。
① リスク許容度|下落にどれだけ耐えられるか
外貨は、円高になると円換算で下がるため、自分がどこまで下落に耐えられるかで比率の適正値が変わります。
- 多少のマイナスなら気にならない → 20〜30% でもストレスが少ない
- 下落が続くと不安になりやすい → 10〜15% から始める方が無理がない
外貨比率は、知識よりも自分のメンタルとの相性 が最も重要になります。
② 運用期間|長期になるほど外貨の偏りが薄まりやすい
外貨は短期では円高・円安が大きく入れ替わり、1〜2年だけを見ると値動きが気になりやすい資産です。
しかし、10年以上の長期になると、金利差の変化や景気サイクルが何度も入れ替わるため、行き過ぎた為替水準が戻る局面も自然と含まれます。
その結果、極端な偏りが薄まり、外貨比率を少し厚めにしても扱いやすくなるのが長期投資の特徴です。
- 長期(10年以上) → 20〜30% の外貨比率でも安定しやすい
- 中期(5〜10年) → 15〜25% を目安にするとバランスが取りやすい
- 短期(3年未満) → 10〜15% の控えめな比率が安心感につながる
為替は「上下を繰り返す資産」という性質を理解すると、運用期間の長さが外貨比率の最適解を大きく変えていきます。
③ 収入・支出の通貨バランス|生活スタイルで最適解が変わる
外貨比率は、生活でどれだけ外貨を使うかでも変わります。
- 海外旅行が多い
- 海外赴任・留学の予定がある
- 外貨建て支出が年に数回ある
こうしたケースでは、外貨比率が 20〜30% あると安心材料になります。
逆に、生活の大部分が円で完結しているなら、10〜20% でも十分に機能します。
✔ まとめ:最適な比率は自分の生活とメンタルで決まる
- 不安に強いか弱いか(リスク許容度)
- どれくらいの期間で運用するか(運用期間)
- 外貨を使う習慣があるか(生活通貨バランス)
この3つを基準にすることで、外貨比率の最適ラインが自然に見えてきます。
外貨比率ごとのメリット・デメリット(一覧)
外貨比率は、10%・20%・30%で性質が大きく変わります。ここでは、比率ごとの特徴をシンプルに比較できるよう整理しました。
外貨10%|「まずは混ぜる」レベルの基本形
メリット
- 円安になったときの影響をわずかに吸収
- 初めての外貨保有でもストレスが少ない
- ポートフォリオ全体の値動きが安定しやすい
デメリット
- 外貨の比率が低く、効果を実感しにくい
- 物価上昇や輸入価格上昇の防衛力としては弱め
外貨20%|生活防衛としてもっとも扱いやすい標準ライン
メリット
- 円安・物価高に対して守られている感がしっかり出る
- NISAの米国株・全世界株だけで自然に達しやすい
- 適度に外貨効果が出る一方で、円高局面の下落も限定的
デメリット
- 円高になると資産全体がやや押される
- リスク許容度が低い人だと少し不安を感じることも
外貨30%|インフレ・円安時代に強い「防衛厚め」の配分
メリット
- 円安・物価高に対する耐性が大幅に高い
- 通貨分散の効果が最も明確に出やすい
- 長期(10年以上)ならバランスが取りやすい
デメリット
- 円高局面では下落インパクトがやや大きくなる
- 比率が高いため、一定のリスク許容度が必要
✔ まとめ:目的別に見る「最適な外貨比率」
- まず外貨を混ぜたい人 → 10%
- 円安・物価高にしっかり備えたい人 → 20%
- 防衛力を厚めにしたい人 → 30%
こうして比率の性格を知ることで、「自分にとって最適な外貨比率」が選びやすくなります。
おすすめの外貨バランスの考え方
外貨比率を10〜30%の範囲で決めたら、次に考えるのは「外貨の中をどう分けるか」というバランスです。
ここではどんな人にも応用できる 3分類のシンプルな割り方 にまとめます。
① 基軸ゾーン(中心)|ブレにくい土台
外貨の中心には、世界で最も使われる基軸通貨を置きます。資産全体の安定性を高め、他の通貨が動いたときの軸になります。
- 外貨全体の 50〜70% 目安
ポイント
- 世界の取引・金融の基準になりやすい
- 情報量が多く、価格形成が読みやすい
- 長期保有で扱いやすいコア資産
② 高金利・利回りゾーン(スワップ収益)|外貨の育てる部分
金利差を活かして、外貨の育成力を上げるパーツ。外貨全体の中で少しだけ利回りを取るイメージです。
- 外貨全体の 20〜30% 目安
ポイント
- スワップ(金利差)の積み上がりで育つ外貨になる
- インフレ時の耐性が高い
- 比率が多すぎるとボラティリティが増えるため適量が大切
👉 外貨を持つだけで積み上がるスワップを理解すると、比率管理がより安定します。

③ 安定・低ボラゾーン(値動き抑制)|ポートフォリオを整える役目
変動が比較的小さく、資産全体のブレを抑える役割。基軸と高金利の中間に置くことで、安定性が生まれます。
- 外貨全体の 10〜20% 目安
ポイント
- ボラティリティを下げて平準化に寄与
- 経済圏などの独自軸で分散効果を補完
- 長期での安心感が増える
✔ 外貨の中身は「3つの役割」で割るとブレにくい
- 中心(基軸)=安定の軸
- 高金利(利回り)=育てるエンジン
- 安定(低ボラ)=整えるクッション
この3つの役割で外貨を割り振るだけで、どの通貨を選んでも破綻しにくい構造 になります。
外貨の中身をさらに深く知りたい方は、基軸・高金利・安定通貨の特徴をまとめた以下の記事もあわせてどうぞ。

外貨比率を維持するコツ(調整方法)
外貨比率は一度決めても、為替の動きによって自然と変わっていきます。
重要なのは、売買で利益を狙うことではなく、決めた比率に戻すだけというシンプルな管理です。
① 円高のとき:外貨比率が下がったら「補充する」
円高になると外貨の評価額が下がり、外貨比率そのものが小さく見えるようになります。
これは悪いことではなく、むしろチャンス。
- 外貨比率が目安より下がった → 少しだけ買い増して元の比率に戻す
これだけで、無理のない円高で外貨を安く拾う流れが作れます。
② 円安のとき:外貨比率が上がったら「抑える」
円安になると外貨の評価額が増え、全体に占める割合が大きくなります。
過剰になりそうなときは、
- 追加投資を円建て中心にする
- 外貨買いを一時ストップする
といった形で 積極的に増やさず調整 すれば十分です。
外貨比率が増えても、外貨を売って戻す必要はありません。
なぜなら、「外貨が増えた=円安が進んだ」という状態だからです。
たとえば、1ドル=100円 → 150円になったとします。
このとき外貨の評価額は増えますが、同時に「円の購買力は下がっている」状態でもあります。
この局面で外貨を売ると、円安で弱くなっている「円の比率」を増やすことになるので、結果的に生活防衛力が下がってしまうのです。
③ 比率管理は「ルール化」が迷いをなくす
為替は動くたびに感情に左右されやすい資産。
そこで「比率の上下だけ」で判断できるようにルールを作ると迷いがなくなります。
- 比率が5%以上ずれたら調整
- 月1回だけ比率を確認する
- 外貨比率20%を中心に上下±5%で運用
こうしたルールを決めておくだけで、為替のニュースに振り回されず、安定して続けられます。
④ 調整の本質は「決めた比率に戻す」だけ
外貨の増減を当てる必要はありません。やることはたったひとつ。
外貨比率がずれたら、元の目安に戻す
これだけで
- 円高で外貨を買えて
- 円安で外貨を増やしすぎず
自然と「為替の波を味方にする」運用が成立します。
よくある質問(FAQ)
外貨比率を決めるときに、よくある質問をまとめました。
Q1|今が円安だけど、外貨を買うのは損?
損かどうかではなく、比率を整える目的で買うなら問題ありません。
外貨比率の調整は「安いから買う/高いから買わない」ではなく、自分の比率に戻すために買う/抑えるという発想です。
つまり、タイミングではなく比率を基準に判断するのがポイントです。
Q2|米ドルと豪ドル、どっちを増やすべき?
ここでは通貨の優劣ではなく、比率の役割で考えるのが正解です。
- 米ドル(基軸)=外貨の中心パートを担当
- 豪ドル(高金利)=利回りや育成枠のパートを担当
どちらが良いかではなく、外貨全体の中でどの役割をどれだけ持たせたいかで比率が決まります。
Q3|もし外貨が下がった場合は?(円高)
外貨が下がる(円高になる)と、外貨比率そのものが小さくなります。
これはむしろ 比率を整えやすいタイミング。
- 外貨比率が目安より下に落ちた → 少しだけ補充して元の比率に戻す
これだけで、無理なくバランスがキープできます。
下落した外貨を積極的に買い増す必要はありません。あくまで 比率が元に戻る程度の調整で十分です。
Q4|外貨預金とFX、どっちが比率管理しやすい?
比率管理が目的なら、外貨が「自分の資産のどこにあるか」が見やすい方がおすすめです。
- 外貨預金 → シンプルで管理が簡単 → 比率が視覚的にわかりやすい
- FX(レバなし・低レバ) → スワップ(金利差)が得られる → 調整しやすく、積立設定との相性が良い → ただし、証拠金管理の理解は多少必要
どちらでも構いませんが、外貨の残高が分かりやすい方を選ぶという視点が大切です。
👉 外貨預金とFXは、コストもリスクも外貨の育ち方もまったく違います。初心者でも判断しやすいように、長期向きの選び方をシンプルにまとめています。

まとめ|外貨比率は「10〜30%」を目安に無理なく続ける
外貨は大きく増やすためのものではなく、円が弱い時代に「生活と資産を守る」ための防衛パーツです。
今回の内容を、最後にシンプルに整理します。
✔ 外貨は「利益目的」より「防衛目的」
円安・物価高の影響をやわらげ、日々の安心感をつくる役割がメイン。勝つためではなく、減らさないための外貨です。
✔ 最適な外貨比率は「10〜30%」が黄金ライン
少なすぎると効果が薄く、多すぎると通貨リスクが重くなる。現実的で続けやすい真ん中のゾーンが10〜30%です。
✔ 生活コストの影響を抑えたいなら「20%前後」がちょうど良い
食費・光熱費・ガソリンなど、円安で上がりやすい支出の相殺力を生みやすいゾーン。迷ったら 20% が最も扱いやすい目安。
✔ 外貨比率が安定すると、家計も資産もブレにくくなる
比率さえ決めてしまえば、タイミングを気にする必要はありません。
- 円高 → 比率が減ったら少し足す
- 円安 → 比率が増えたら、日本円の投資を優先する
これだけで十分。ルール化すると、迷いが消えて長く続けられるようになります。
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