主要6通貨+日本円の特徴を比較|外貨の選び方と役割をわかりやすく解説

はじめに|外貨の「選び方」がこれからの資産防衛で大切になる理由
円安や物価の上昇が続くなかで、「円だけで資産を持つこと」が以前よりもリスクを含むようになってきました。
ガソリンや食料、電気代まで静かに値上がりしていく一方で、預金金利はほとんど動きません。
こうした環境が続くと、どうしても日本円の弱さを意識せざるをえず、外貨を考えるきっかけにもなります。
ただ、いざ外貨を持とうとすると、すぐに壁にぶつかります。
「どの通貨を選べばいいんだろう?」
「ドルだけで十分なのか、分けて持つべきなのか?」
外貨の情報は断片的で、通貨ごとの性格がつかみにくい。
その結果、「外貨を持つべき理由は理解したけれど、選び方が分からない」という人がとても多いのだと思います。
わたし自身も最初はそうでした。
ドルを少し積み立て始めたものの、これで本当にいいのか自信が持てず、しばらく迷っていました。
ところが、実際に複数の通貨を使ってみると、それぞれの動き方や強みがまったく違うことが分かり、外貨の選び方がようやくわかった気がしました。
そのような経験も踏まえて、この記事では、主要6通貨(USD/EUR/AUD/GBP/CHF/SGD)を日本円(JPY)と比べながらそれぞれの役割・強み・弱点を整理していきます。
円を基準に見ることで、「この通貨はどんな場面で強いのか」が自然とつかめるはずです。
通貨の性格がわかると、外貨運用は安定する
外貨は、株のように「上がりそうな銘柄を当てる」タイプの資産ではありません。
むしろ、各通貨が持つ
- 金利
- 安定性
- 景気との相性
- 有事のときに買われるかどうか
といった性格を理解して組み合わせることで、資産全体の揺れが落ち着きやすくなります。
外貨は、どこを選ぶかで安定度が大きく変わる資産クラスです。
そのため、最初の「選び方」を押さえるだけで、運用の迷いは驚くほど減ります。
外貨を選ぶ前に知っておきたい「3つの基準」
外貨は種類が多く見えるものの、実際は3つの基準でほぼ判断できます。
この3つの軸を押さえておくと、「どの通貨を持つと、資産全体が安定しやすいのか」が自然と見えてきます。
① 金利(スワップ)──外貨の育ちやすさを決める軸
ひとつめは、もっとも分かりやすい金利。
金利が高い通貨
- 保有しているだけでスワップ(金利差)が積み上がる
- 長期で育ちやすい通貨になる
金利が低い通貨
- スワップはあまり期待できない
- その代わり、値動きが安定しやすい
金利は外貨投資の収益源そのものなので、必ず押さえておきたい軸です。
② 通貨の安定性(安全資産かどうか)──資産の揺れをどれだけ抑えられるか
外貨には、値動きが大きい通貨と落ち着いた通貨があります。
たとえば
- CHF(スイスフラン)やSGD(シンガポールドル):安定性が高い
- AUD(豪ドル)やGBP(ポンド):景気の影響を受けやすい
というように通貨ごとに揺れやすさがまったく違います。
ここを理解しておくと
- どの通貨を軸にするか
- どの通貨をスパイスとして少量混ぜるか
が判断しやすくなります。
③ 景気・資源・構造の強さ──長期で勝ちやすいかどうか
外貨は「国の力」をそのまま反映します。
- 経済が強い国
- 資源を持っている国
- 生産性が高い国
- 政策が安定している国
こうした国の通貨は、長期で安定しやすく、円だけでは取り込めない成長力を加えてくれます。
逆に、景気に影響されやすい国の通貨は、利回りは高くても値動きが大きくなりがちです。
この3つの基準でほぼ選べる
外貨は難しいイメージがありますが、実際は
金利 × 安定性 × 国の強さ
の3軸で判断すれば十分です。
この記事では、この基準にもとづいて、USD/EUR/AUD/GBP/CHF/SGD を日本円と比べながら整理していきます。
この3つの軸を押さえておくことで、次のセクションからの比較がスムーズに理解できるはずです。
主要6通貨の特徴と向いている人
ここからは、外貨でよく使われる6つの通貨を、日本円との違いがわかるように整理していきます。
それぞれ比較することで、自分に合う通貨のイメージが自然とつかめるはずです。
米ドル(USD)|外貨の中心、最初はまずここから
- 安定性:★★★★★
- 金利:★★★☆☆
- 特徴:基軸通貨。リスクオフでも買われやすい。
米ドルは、外貨の中心となる通貨です。世界の基軸通貨であり、為替のニュースで最も動向が注目される存在でもあります。
最初に選ぶ外貨としてもっとも扱いやすく、外貨比率の軸として最適です。
向いている人
- 外貨を初めて持つ人
- 通貨の中心をつくりたい人
弱点
- 世界不安が高まるとドル高になりやすく、買いづらいタイミングが生まれやすい
ユーロ(EUR)|分散効果が大きいが、景気影響を受けやすい
- 安定性:★★★★☆
- 金利:★★★☆☆
- 特徴:分散効果の高い大型通貨。景気影響を受けやすい。
ユーロは、米ドルの次に存在感が大きい通貨で、分散の軸として優秀です。
一方で、欧州の景気や政治が不安定なときには動きが鈍くなりやすい側面があります。
向いている人
- USDに偏りすぎたくない人
- 通貨のバランスを整えたい人
弱点
- 欧州景気・地政学の影響を受けやすい
豪ドル(AUD)|インフレ・資源価格に強い利回り通貨
- 安定性:★★★☆☆
- 金利:★★★★☆
- 特徴:資源と景気の影響を受けやすい
豪ドルは資源国通貨で、インフレ局面に比較的強い特性があります。
金利が比較的高めの傾向があり、長期では利回りを得やすい通貨として使われることが多い。
向いている人
- スワップを受け取りながら外貨を育てたい人
弱点
- 景気減速のときは下落が大きくなりやすい
英ポンド(GBP)|金利は高いが値動きが大きめ
- 安定性:★★★☆☆
- 金利:★★★★☆
- 特徴:ボラティリティ高め
ポンドは金利が高く、外貨のなかではリターンを狙いやすい通貨のひとつです。
ただし、英国独自の政策・景気・政治の影響を受けやすく、値動きは大きくなりがちです。
向いている人
- 積極的に外貨リターンを取りに行きたい人
弱点
- Brexit以降、政治リスクの影響が残る
スイスフラン(CHF)|リスクオフで買われる避難通貨
- 安定性:★★★★★
- 金利:★☆☆☆☆
- 特徴:安全資産として買われやすい
スイスフランは有事の買い通貨と呼ばれるほど安定性が高く、リスクオフ局面で買われやすい傾向があります。
その反面、金利が低く、スワップ収益は期待できません。
向いている人
- ポートフォリオの守りを高めたい人
弱点
- 金利が低いため、外貨を育てる用途には向かない
シンガポールドル(SGD)|アジアで最も安定した通貨
- 安定性:★★★★★
- 金利:★★★☆☆
- 特徴:通貨管理で急落しづらい
シンガポールは通貨を管理しながら安定させる政策をとっており、アジアの中ではもっとも揺れにくい通貨のひとつです。
外貨比率のブレを抑えたい人にとって、とても扱いやすい存在です。
向いている人
- 外貨の値動きを穏やかにしたい人
弱点
- 流動性はUSDほど高くない
主要6通貨の比較表|一目でわかる特徴のちがい
ここまで見てきた6通貨を、日本円から見たときの安定性・金利・向いている人・弱点 で一度整理してみます。
この特徴をつかんでおくと、「自分はどの通貨を中心にすべきか」が決めやすくなります。
外貨6通貨の特徴一覧表
| 通貨 | 安定性 | 金利 | 向いている人 | 弱点 |
|---|---|---|---|---|
| USD | ★★★★★ | ★★★☆☆ | 全員 | 買い時を選びにくい |
| EUR | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | USD偏りを避けたい人 | 景気差の影響を受けやすい |
| AUD | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | 金利・スワップを狙いたい人 | 景気敏感で下落が大きい |
| GBP | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | 積極的に外貨リターンを取りたい人 | 政治リスク・変動大 |
| CHF | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ | 守りを強くしたい人 | 利息が少なく育成に不向き |
| SGD | ★★★★★ | ★★★☆☆ | 安定性を重視したい人 | 流動性がUSDより低い |
目的別|初心者におすすめの外貨3選【迷ったらこの組み合わせ】
外貨を持ってみたいと思っても、「どれを選べばいいの?」という疑問は必ず出てきます。
ここでは、最初に迷いがちな「最初はどの外貨を買えばいい?」に対する、実践的な答えをまとめました。
① 安全性を重視したい人
USD(米ドル)+ SGD(シンガポールドル)
- USD:外貨の中心。世界的な安全通貨として安定しやすい
- SGD:アジアで最も安定した通貨。急落しづらい性質
価格のブレを抑えつつ、外貨の効果(円安時の防衛)をしっかり取りたい人向け。
外貨を始めるときに、もっとも「安心して続けやすい」組み合わせです。
② 利回りも狙いたい人
USD(米ドル)+ AUD(豪ドル)
- USD:安定性と世界シェア
- AUD:資源国通貨で金利が高め。外貨の利回りの柱になる
外貨を守りながら育てたい人に向く組み合わせ。
USDだけでは単調に感じる人が、AUDを少し混ぜて利回りを加えるケースが多いです。
③ とにかく安定して持ちたい人
USD(米ドル)+ CHF(スイスフラン)+ SGD(シンガポールドル)
- USD:外貨の軸
- CHF:有事に最も強い「守り通貨」
- SGD:値動きが穏やかでブレを抑える役割
外貨なのに安定している状態をつくりたい人向けのセット。
極力ブレを減らしたい人、外貨初心者だけど不安が強い人との相性がとても良いです。
👉 外貨は通貨ごとに得意な場面が違うため、組み合わせ方で運用の安定感が大きく変わります。もし、実際にどう持てばいいか迷っている場合は、こちらの記事でまとめています。


外貨比率の決め方|10〜30%がちょうどいい
外貨に興味があっても、「どれくらい外貨を持てばいいの?」というところで手が止まってしまう人は多いと思います。
外貨は多すぎてもリスク、少なすぎても効果が出ないという性質があるため、最初に大まかな目安を持っておくと、運用がとてもラクになります。
ここでは、生活防衛・資産運用・物価上昇の3つの観点から、はじめての人でも判断しやすい外貨比率の基準(10〜30%)をまとめました。
① 生活防衛が目的なら10%
外貨を生活の保険として持つなら、まずは10%前後がちょうど良いラインです。
- 円安で生活費が上がったときのクッションになる
- 急な変動でも心理的な負担が少ない
- 少額でも効果が実感しやすい
最初はこのくらいから始めると、通貨分散の効果を感じつつ、無理なく続けられるはずです。
② 円安・物価上昇リスクを抑えたいなら20%
物価が上がりやすい時期や、円の不安が気になる時期には20%前後が現実的なラインです。
- 物価上昇のダメージを自然に緩和できる
- 資産全体のブレがかなり減る
- 外貨の金利・スワップの恩恵を受けやすい
10%では少し心もとないけれど、大きくリスクを取りたいわけでもない。そんな人が最も取り入れやすい比率です。
③ 世界分散で安定的に育てたいなら30%まで
長期で外貨を育てるイメージなら、最大でも30%以内に収めておくとバランスが良いです。
- 米ドルの国際的な強さ
- 豪ドルの利回り
- シンガポールドルやスイスフランの安定性
- 積立FXでのスワップ収益
これらを組み合わせると、外貨が第二の資産エンジンになります。
ただし、30%を超えると円の比率が薄くなりすぎるため、30%を上限と考えておくのが安全です。
👉 外貨比率に迷ったら、こちらで詳しくまとめています
外貨をどれくらい持つべきかは、生活や価値観によって変わります。もし判断がむずかしい場合は、次の記事でより詳しく整理しています。

わたしの外貨ポートフォリオ
いまのわたしは、USDを中心に、AUDとSGDを少しだけ混ぜて持っています。
- USD …… 外貨の軸として安定感がある
- AUD …… 歴史的に金利が高めで、利回りの柱になりやすい
- SGD …… 値動きが穏やかで、全体のブレを抑えてくれる
この組み合わせにしてから、円安のニュースに過度に反応しなくなりました。
通貨ごとの特徴がわかってくると、外貨比率の調整もしやすくなるものだなと感じています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 外貨はどの通貨から始めればいいですか?
初めてなら米ドル(USD)が最も扱いやすいです。外貨の中心で安定性が高く、通貨全体を理解する基準にもなります。
Q2. 通貨は何種類くらいに分けるのが良いですか?
2〜3種類が負担なく続けやすい範囲です。
USDを軸に、目的に応じて AUD(利回り) または SGD/CHF(安定) を加える形が自然です。
Q3. 外貨はいつ買うのが正解ですか?(円高を待つべき?)
為替は専門家でも当て続けるのが難しいため、答えは「タイミングを分散して買う」がいちばん安定するです。
積立FXやなど「分散される仕組み」を使うと迷いが減ります。

Q4. 外貨はどれくらいの割合で持つべきですか?
生活・資産の防衛目的なら 10〜30% がひとつの目安。急に増やす必要はなく、少額ずつ外貨比率をならすだけで十分機能します。
まとめ|通貨の特徴が分かると、外貨投資は一気にわかりやすくなる
外貨は「どれが上がるか」を当てる資産ではなく、通貨ごとの特徴を知って組み合わせることで安定性が生まれる資産です。
今回整理した6通貨を見てもわかるように、それぞれに違う強みがあります。
- USD:外貨の軸になる安定感
- EUR:分散の幅を広げる大きな通貨
- AUD:歴史的に金利が高めで、利回りの柱をつくりやすい
- GBP:リターンを狙いやすいが動きは大きい
- CHF:有事に強い「守り」の代表格
- SGD:アジアで最も値動きが穏やかな安定通貨
通貨の特徴がわかると、「外貨比率をどう整えるか」「どの通貨をどれだけ混ぜるか」といった判断が、自然にしやすくなります。
わたし自身も、USDを軸にしながらAUDやSGDを少しずつ混ぜていくなかで、外貨の揺れ方がつかめてきて、為替のニュースに過度に振り回されなくなりました。
外貨は、当てるものではなく、ならして持つもの。
少しずつ積み上げるだけでも、円安・円高どちらの局面でも心強い味方になってくれるはずです。
関連リンク
👉 外貨をどう混ぜれば安定するのか、具体的な組み合わせをまとめています。

👉 円安・物価高の時代に、どれくらい外貨を持てば安心なのかを整理した記事です。

👉 外貨そのものを低コストで育てたいときの実践方法をまとめています。
