ROAとは?「会社全体の稼ぐ力」を測る指標と投資での活用法

ROA(総資産利益率)とは?会社全体の稼ぐ力を測る基本指標
ROA(アール・オー・エー)は「Return on Assets」の略で、日本語では 総資産利益率 と呼ばれます。
企業が保有するすべての資産を使って、どれだけ効率よく利益を生み出しているかを示す指標です。
ROE(自己資本利益率)が「株主から預かった自己資本」に対する効率性を測るのに対し、
ROAは「株主資本+借入=会社全体の資産」に対する効率性を表します。
計算式
ROA(%)= 当期純利益 ÷ 総資産 × 100
たとえば、総資産1,000億円の会社が100億円の純利益をあげた場合、
ROAは「100 ÷ 1,000 × 100 = 10%」となります。
この数値が高いほど、資産をうまく活かして利益を生み出していることを意味します。
つまりROAは、企業の「経営効率」そのものを可視化する指標 といえるのです。
ROAでわかること|資産効率と業種ごとの違い
ROA(総資産利益率)をチェックすることで、企業がどれだけ効率的に資産を使って利益を生み出しているか が見えてきます。
これは単なる「収益性の指標」ではなく、経営の上手さ を測る指標でもあります。
ROAが高い会社
- 持っている資産をうまく活かし、少ない資産でしっかり利益を上げている状態。
 - 軽資産型ビジネス(IT・サービス・ソフトウェア業など)で高く出やすい。
 - 事業モデルの効率性が高く、経営のスリム化が進んでいるサイン。
 
ROAが低い会社
- 資産を多く抱えているのに、十分に利益を生み出せていない状態。
 - 不動産・銀行・電力などの「重資産型業種」は構造的に低くなりやすい。
 - 数字が低くても、業界水準に照らせば問題ないケースも多い。
 
また、ROAとROEを組み合わせて見ることで資本構造も分析 できます。
- ROAが低いのにROEが高い場合 → 借入(レバレッジ)で効率を押し上げている可能性。
 - ROAとROEがどちらも高い場合 → 借入に頼らず、事業自体が高効率な優良企業。
 
👉 ROAは単体で見るより、ROEとセットで資本効率を理解することに意味があります。
ROAをどう活用する?投資判断の実践ポイント
ROA(総資産利益率)は、数字の高さだけで良し悪しを決める指標ではありません。
「なぜ高いのか」「なぜ低いのか」よりも、その変化と一貫性をどう読むか が重要です。
推移を追う
- 単年ではなく、3〜5年のトレンドを確認する。
 - 安定して高いROAを維持していれば、経営効率が継続的に改善しているサイン。
 - 一方、急激な上昇や低下がある場合は、投資や一時的要因の影響を疑う。
 
ROEとの関係を見る
- ROEが高くてもROAが低い場合は、借入(レバレッジ)による効率の見かけ上の上昇かもしれない。
 - 逆にROAもしっかり高ければ、事業自体の収益構造が強いと判断できる。
 
経営改善の成果を測る
- 設備投資・人件費・資産売却など、経営施策の結果がROAに反映される。
 - ROAがじわじわ改善している企業は、資産活用や事業効率化が進んでいるケースが多い。
 
👉 ROAを投資に活かすコツは、“結果の数字”ではなく“改善の流れ”を見ること。過去推移とROEの関係で、企業の本当の稼ぐ力を読み解けます。
ROAの見方とわたしの視点
ROA(総資産利益率)を分析するとき、わたしが重視しているのは「数字」そのものよりも、そこに現れる流れと構造 です。
単年の高さよりも、「どう変化しているか」「他の指標とどう整合しているか」に注目します。
① 改善トレンドを確認する
- 過去数年でROAが上昇している企業は、経営効率が着実に向上しているサイン。
 - 売上や利益の伸び以上に、「資産をどう使って稼いでいるか」を見る。
 - 改善が続く企業は、経営のPDCAが回っている可能性が高い。
 
② ROEとの関係を見る
- ROEが高くてもROAが低い企業は、借入によるレバレッジ効果で一時的に数字が良く見えている場合がある。
 - 一方、ROAも高ければ、レバレッジに頼らず本業で稼げる強い企業構造。
 - ROAとROEをセットで見ると、「借入依存」か「実力型」かが明確に分かる。
 
③ 業種ごとの適正水準で判断する
- 不動産や金融などの重資産業では、ROAは低めでも健全。
 - 軽資産型のIT・サービス業では、ROAが高めでないと競争優位を保ちにくい。
 - 同業比較+過去推移の掛け合わせ が、もっとも信頼できる分析方法。
 
👉 ROAは「資産をどれだけ活かせているか」を測る経営効率の鏡。数字の背景を読む力が、投資家としての視座を高めてくれます。
ROAまとめ|企業の稼ぐ力と資本効率を読む
ROA(総資産利益率)は、会社全体の資産をどれだけ効率よく利益に変えているか を測る指標です。
ROEが「株主視点」なのに対し、ROAは「会社全体視点」。
企業の総合的な経営効率や収益構造の健全性を判断するうえで欠かせません。
投資判断に活かすポイント
- ROAは“単年の高さ”より“推移の安定性”を重視。
 - ROEと並べて見ることで、借入によるレバレッジ効果か、本業の実力なのかを見極められる。
 - 同業種・過去推移・ROE比較の3点セットで評価するのが基本。
 
長期投資で注目したい理由
- 長く高ROAを維持できる企業は、経営効率が高く、景気変動にも強い。
 - ROAの改善トレンドが続く企業は、経営改革や事業転換が実を結びつつある可能性が高い。
 - 短期の収益性ではなく、長期の“資産活用力”を見抜く ことが投資家の腕の見せどころ。
 
👉 ROAは「企業の稼ぐ力」を立体的に読み解く指標。数字の裏にある経営構造と時間軸を意識すれば、より確度の高い投資判断につながります。
次回予告|営業利益率で「本業の稼ぐ力」を読み解く
次回は、企業の本業がどれだけ効率よく利益を生み出しているかを示す 営業利益率 を取り上げます。
売上高に対してどれくらい営業利益を残せているか──。
ROAやROEが“全体の効率”を示すのに対し、営業利益率は“事業そのものの強さ”を測る指標です。
👉 次回記事:営業利益率とは?本業の収益力を見抜くための基本指標

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