PER(株価収益率)の基礎と活用法|初心者から上級者まで使える割安株の見分け方

PER(株価収益率)の基礎を知る|投資の入り口となる指標
株式投資を始めたばかりの人にとって、最初に出会う指標のひとつが PER(株価収益率) です。
ニュースや証券会社のレポートでも「PERが高い」「PERが低い」といった言葉をよく目にしますが、果たしてそれはどういう意味なのでしょうか。
PERは、企業の「利益」と「株価」の関係を表すシンプルな指標で、
- 低ければ割安株の可能性
- 高ければ将来成長への期待が大きい
と解釈されます。
ただし「PERが低い=お得」「高い=危険」と単純に決めつけてしまうのは危険です。
業種ごとに適正水準が違い、さらに実績ベースと予想ベースでも意味が変わるからです。
👉 本記事では、初心者でも理解しやすいように PERの基本から応用的な使い方 まで整理し、株価の割安・割高を見極める力をつけることを目指します。
PERとは?株価が利益の何倍で評価されているかを示す指標
PER(株価収益率:Price Earnings Ratio)は、株価が1株あたり利益(EPS)の何倍で取引されているかを示す指標です。
株価が利益に対して割安か割高かを判断するための「入り口」として、初心者からプロ投資家まで広く使われています。
PERの計算式
PERの計算はシンプルです。
PER = 株価 ÷ EPS(1株あたり利益)
たとえば、株価が1,000円、EPS(1株利益)が100円の場合、PERは 10倍。
これは「その企業を、利益の10年分の価格で評価している」という意味になります。
イメージで理解するPER
わかりやすい例として、カフェ経営を考えてみましょう。
・毎年50万円の利益を出すカフェを、1,000万円で購入すると…
1,000万円 ÷ 50万円 = PER 20倍
つまり「20年分の利益でこのカフェを買った」という感覚です。
PERも同じで、企業という“利益を生み出すビジネス”を何年分の利益で評価しているかを表しています。
PERの解釈
PERが低い:株価が利益に対して安い水準にある可能性
PERが高い:将来の成長が期待されている可能性
ただし、PERは「業種」や「企業の成長段階」によって適正水準が異なります。単純に「低い=割安」「高い=割高」と決めつけるのは危険です。
👉 PERは 「株価が利益に対してどれくらい期待を織り込んでいるか」 を測る道具、と覚えておくのが最も実践的です。
PERの活用方法|割安・割高をどう判断するか
PERは「株価が利益の何倍で評価されているか」を示す指標ですが、数字の大小だけで自動的に「割安・割高」を判断するのは危険です。ここでは、投資家が実務でどう使うかを整理します。
PERが低い=割安の可能性
PERが低いとき、一般的には「株価が利益に対して安い水準にある」と解釈されます。
👉 たとえば、PERが8倍の企業は、同業平均が15倍なら「利益に比べて株価が低い=割安株」と見られやすいです。
ただし、低PERの裏には「成長性が低い」「市場からの評価が低い」といった理由が隠れている場合もあります。安易に「割安」と決めつけず、背景をチェックすることが重要です。
PERが高い=成長期待の可能性
PERが高い場合は、「将来の利益拡大が期待されている」と解釈されます。
特に成長企業では、現時点の利益は小さくても、将来の利益拡大を織り込んで株価が買われるため、PERは高めに出るのが一般的です。
👉 たとえば、成熟したインフラ企業でPER20倍は「やや割高」と感じられるかもしれませんが、急成長するIT企業で同じ20倍なら「むしろ妥当、あるいは割安」と判断されるケースもあります。
比較が大前提:同業他社・市場平均との比較
PERは「絶対値」ではなく「相対的にどうか」で判断します。
- 同業比較:同じ業種内で比較すると、その企業の評価水準がわかりやすい
- 市場平均との比較:日本株全体のPER平均はおおよそ14〜16倍が目安
この比較を通じて、「低いから割安」「高いから割高」といった短絡的な判断を避けることができます。
👉 まとめポイント
- PERが低い=割安の可能性、ただし「理由」まで確認する
- PERが高い=成長期待の可能性、特に新興・成長企業では自然
- PERは同業比較・市場平均との相対評価が必須
PERの注意点と限界|予想PERと実績PERの違いを理解する
PER(株価収益率)は投資の基本指標として非常に便利ですが、いくつかの限界があります。数字だけを鵜呑みにすると誤解につながるため、注意点を押さえておきましょう。
赤字企業では算出できない
PERは「株価 ÷ EPS(1株利益)」で計算されます。
そのため EPSがマイナス(=赤字)の場合、PERは算出不能となり比較に使えません。成長企業でも一時的な投資負担で赤字になるケースがあるため、「赤字=即ダメ」ではないものの、PER以外の指標で補う必要があります。
特別利益で見かけが歪む
一時的な売却益や特別利益が計上されるとEPSが急増し、見かけ上PERが大幅に低下することがあります。表面上は「割安」に見えても、実態は一過性の利益にすぎないケースも多いため注意が必要です。
👉 「過去数年の平均PER」や「予想PER」と合わせて見るのが安全 です。
予想PERと実績PERの違い
投資家がよく使うPERには大きく分けて 2種類 あります。
- 実績PER:直近1年の実績EPSを基準に算出 → 「過去の利益水準で株価が何倍か」を示す
- 予想PER:今期や来期の予想EPSを基準に算出 → 「将来の利益予想で株価が何倍か」を示す
たとえば、現在株価が2,000円、直近EPSが100円なら実績PERは20倍。
一方で来期EPSが200円に倍増する予想なら、予想PERは10倍まで低下します。
👉 「成長企業を見るなら予想PER」「成熟企業を見るなら実績PER」 と使い分けるのが実践的です。
業種ごとに適正水準は異なる
同じPER20倍でも、解釈は大きく異なります。
- インフラ・金融など成熟産業 → 高めの水準
- IT・成長企業 → 妥当、むしろ割安
つまり「日本株の平均PER(おおよそ14〜16倍)」を一つの基準にしつつも、業種や成長段階ごとに目安を調整する必要がある ということです。
PERの目安|日本株の平均PERと業種別比較
PER(株価収益率)は「割安か割高か」を判断する指標ですが、絶対的な基準は存在しません。重要なのは「平均水準」や「業種特性」と比較することです。
日本株の平均PER
日本株市場全体の平均PERは、おおよそ 14〜16倍前後 とされています。
つまり、PER15倍をひとつの目安とすると、
- 15倍以下:相対的に割安圏
- 15倍以上:将来成長が織り込まれつつある水準
と整理できます。
もっとも、この数値は市場環境や金利動向によって変動するため、定点ではなく「今の相場水準」で比較することが実践的です。
業種別のPER目安
同じPERでも「割安」「割高」の解釈は業種によって大きく異なります。
たとえば:
- インフラ・金融・商社株
成熟産業のため利益成長が限定的。平均PERは 10〜12倍程度 が多く、20倍を超えると割高感が強い。 - 製造業(自動車・機械など)
景気に連動しやすいため、平均PERは 12〜15倍前後。景気拡大局面では20倍超まで評価されることも。 - IT・ハイテク・新興企業
成長期待が大きく、平均PERは 20〜30倍前後 が普通。PER20倍は「高い」のではなく「標準」と解釈されるケースも多い。
👉 同じPER20倍でも、インフラ株なら割高、IT株なら妥当水準 と評価が分かれるのはこのためです。
PERを使う際の実践ポイント
- 市場全体の平均と照らす:「日本株の平均PER15倍前後」を基準に整理
- 業種の性質を理解する:成熟産業か、成長産業かで目安を変える
- 景気局面を意識する:不況期は割安に見え、好況期は割高に見えるのが常
PERは「単なる数字」ではなく、市場平均・業種特性・景気サイクルを組み合わせて読むことが重要です。
PERと他指標の組み合わせ活用|PBR・ROEとの併用が必須
PER(株価収益率)は「株価が利益の何倍で評価されているか」を示す便利な指標ですが、PER単体での判断は不十分です。実際の投資判断では、PBRやROEなどの他の指標と組み合わせることで、より精度の高い評価が可能になります。
PERとPBRの組み合わせ:ミックス係数
PERとPBRを掛け合わせた「ミックス係数」は、株価の割安度を多角的に測る指標です。
- 15以下:割安圏とされやすい
- 15〜25程度:標準〜やや割高
- 25以上:高評価銘柄(成長期待が大きい)
👉 たとえば PER10倍・PBR0.8倍なら、ミックス係数は8。これは典型的な「割安株」として注目できます。
PERとROEの併用
ROE(自己資本利益率)は、企業が資本をどれだけ効率よく利益に変えているかを示す指標です。
- PERが低くても、ROEが低い企業は「稼ぐ力に乏しいだけ」という可能性がある
- PERがやや高くても、ROEが高い企業は「効率的に稼ぎ、成長期待が妥当」と評価できる
👉 「PER × ROE」 の視点を持つと、「本当に割安か、それとも成長力に見合った評価か」がよりクリアになります。
成長率との組み合わせ:PEGレシオ
PERを利益成長率で割った「PEGレシオ」も応用的に使えます。
- 1倍前後:妥当水準
- 1未満:成長に対して株価が割安
- 1超え:株価に成長期待が織り込まれている
成長株を見るときには、PER単体よりPEGのほうが実態に近いこともあります。
実践的な使い方
- PERは割安・割高の入り口
- PBRと組み合わせて資産面から補強
- ROEで収益性を加味
- 成長率を加えて妥当性をチェック
PER単独では見誤りやすいですが、複数の指標をクロスチェックすることで「本当に買い時かどうか」が見えてきます。
わたしの視点|PERをどう使うか
PER(株価収益率)は、投資をはじめた頃から今に至るまで、わたし自身もよく使ってきた指標です。ただ経験を重ねるにつれて「PERの使い方」や「活用する場面」は大きく変わりました。
投資初心者のころのPERの見方
最初の頃は、「PERが低い=割安株」と単純に考えていました。
実際に「PER10倍以下だからお得だろう」と買った銘柄もあります。けれど、業績が悪化して株価がさらに下がり、結果的には「安い株には安い理由がある」ことを痛感しました。
👉 PERは「株価が利益に対して割安かどうか」を示す便利な指標ですが、数字だけで安心してしまうのは危険だと学びました。
いまのPERの使い方
現在では、PERを 「何年で投資額を回収できるか」という入り口 として使いつつ、必ず他の視点と組み合わせます。
- PBRやROEとの組み合わせ → 資産効率や収益力を加味
- 予想PERの活用 → 将来の成長シナリオが株価にどう織り込まれているかを確認
- 業種平均との比較 → 同じ20倍でも「製造業」と「IT企業」では意味が違う
このように「PER単体ではなく、文脈の中でどう解釈するか」が重要だと感じています。
長期投資でのPER活用
長期投資を前提にするなら、PERの高さを怖がりすぎないことも大事です。
たとえば成長株はPERが30倍を超えることも珍しくありませんが、それが 「将来の利益成長で正当化できるか」 を見るようになりました。
👉 わたしにとってPERは、いまでは「株価がどれくらい未来を織り込んでいるか」を考えるためのツールになっています。
まとめ|PERは「利益に対する株価倍率」を読む入り口指標
ここまで PER(株価収益率) の基本から活用方法、注意点まで整理してきました。改めて押さえておきたいポイントをまとめます。
PERの基本
- PERは「株価 ÷ EPS(1株利益)」で算出
- 「株価が利益の何倍で評価されているか」を示す指標
- 初心者でも直感的に「何年で投資を回収できるか」をイメージできる
PERの活用方法
- 低いPER=割安に見える(ただし成長期待が低いケースも)
- 高いPER=割高に見える(ただし将来成長を織り込んでいる場合も)
- 同業他社や業種平均との比較で妥当性を判断することが重要
PERの注意点
- 赤字企業では計算できない
- 一時的な特別利益でPERが低く見える場合がある
- 実績PERと予想PERを分けて理解することが不可欠 → 実績PERは「過去の利益」、予想PERは「将来の利益」を基準にしたもの
投資家にとってのPER
PERは万能な指標ではありません。
単独では誤解を招きやすいため、PBRやROE、成長率とあわせて活用することが大切です。
👉 結論:PERは「株価と利益の関係をつかむ入り口指標」。
投資判断では、数字の大小そのものより「業種・成長性・将来性」という文脈とあわせて読むことが、長期的に成功する投資への近道です。
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次回予告
次回は 「PBR(株価純資産倍率)」──資産から株価を読む基本指標 を解説します。
PERとセットで理解することで、割安株投資の判断力が大きく広がります。

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