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企業分析

なぜここまで評価される?──レーザーテック(6920)の成長力と株価を徹底分析

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レーザーテック株の保有理由と見直しの背景

レーザーテック(6920)は、EUV(極端紫外線)露光向けマスク欠陥検査装置で世界シェア100%を誇る企業です。半導体微細化の進展に不可欠な存在であり、「成長株の代表格」とも言えるポジションを築いてきました。

2025年春、半導体製造装置株全体が米中摩擦や市況調整を背景に下落する中、同社株も短期的に押し目を形成。わたしも、同社は短期トレード枠として実際に売買してきました。

現在株価は約17,700円。短期的な節目に差しかかっており、今後の値動きや業界環境を踏まえた判断が必要です。

この記事では、レーザーテックの事業構造・財務基盤・成長ドライバー・リスク要因を整理し、株価の割安/割高評価と投資戦略を詳しく解説します。

レーザーテック株の企業概要と市場での地位

レーザーテック(6920)は、EUV(極端紫外線)露光マスク欠陥検査装置で世界トップ(100%)シェアを誇る企業です  。半導体の微細化と先端プロセス拡大という構造的変化の中で、不可欠な検査ツールとしての地位を築いています  。

本社は神奈川県横浜市。2025年6月期の連結業績では、売上高2,514億円(前年比+17.8%)、営業利益1,228億円(+51.0%)、純利益846億円(+43.3%)と過去最高を記録し、財務体質も強化されました(自己資本比率63.7%) 。

主力の半導体関連装置が売上の中心で、サービス事業の伸長(+48.3%)にも注目です 。また、中期経営計画では、2030年度に営業利益率35%以上、売上400~5000億円を目指しています 。

業界全体では、EUVマスク検査装置の市場規模が2025年には約25~35億ドルに達し、年平均成長率(CAGR)は約15%と高い成長性が見込まれています 。

👉 この強固な事業構造は株価にも色濃く反映されており、現在の株価指標は PER27.34倍・PBR7.47倍。国内製造業の平均を大きく上回る“プレミアム評価”を受けています。

投資家は「独占的技術」「数年先まで見える受注残」「次世代EUVへの布石」といった要素を織り込み、まさに“高値でも買われる理由”が数字に表れている状況です。

さよすけ
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レーザーテック株の財務状況と株主還元方針

レーザーテック(6920)は、直近の業績で過去最高益を更新し、強固な財務基盤を築いています。2025年6月期の業績は売上高2,514億円(前年比+17.8%)、営業利益1,228億円(+51.0%)、純利益846億円(+43.3%)。営業利益率48.8%と製造業としては突出した高収益体質を誇ります。自己資本比率は59.2%と依然として高水準にあり、成長投資と株主還元をバランスよく進められる体制です。

安定したキャッシュフロー

半導体製造装置は景気循環の影響を受けやすい分野ですが、レーザーテックは

  • 世界唯一の技術による寡占的ポジション
  • 数年先まで確保済みの受注残 を背景に、キャッシュフローの安定性が際立っています。この点は一般的な半導体株と比較しても大きな強みであり、財務健全性をさらに押し上げています。

株主還元方針

株主還元については「配当性向25%以上」を基本方針としています。2025年6月期の年間配当は1株あたり288円。配当利回りは約1.6%(株価17,700円ベース)。利回り自体は高配当株に比べて控えめですが、着実な増配を続けている点に投資家の安心感があります。

また、還元に偏重せず、研究開発や次世代EUV対応への投資にも積極的に資金を振り分けています。これは「高成長+持続的配当」という成長株らしい設計であり、長期的な株主価値向上につながる姿勢といえます。

高収益体質と堅実な配当方針は、プレミアム評価を受ける株価の背景にも直結しています。

さよすけ
さよすけ

レーザーテック株の将来展望と成長ドライバー

レーザーテック(6920)の最大の強みは、EUVマスク欠陥検査装置という独占市場における支配的地位です。
EUVリソグラフィの本格普及が進むなか、同社の成長は以下のドライバーによって強固に支えられています。

1. EUVリソグラフィの拡大

半導体の微細化は7nmから5nm、さらに2nm世代へと進展しています。その過程でEUVリソグラフィの採用が加速しており、同社の検査装置は必須インフラとして需要が拡大中です。市場規模は2025年時点で25〜35億ドルに達し、今後も年率15%前後の成長が見込まれています。

2. 次世代EUV(High-NA)対応

ASMLが開発するHigh-NA EUV露光装置の量産化に伴い、新世代マスク検査装置の需要が高まります。レーザーテックは早期から研究開発を進めており、次世代規格対応の独占的ポジションを引き続き維持する見通しです。これは今後の成長加速要因として投資家からも注目されています。

3. サービス・アフターマーケットの伸長

直近決算で+48.3%と急伸した「サービス事業」は、装置の稼働台数増加に比例して拡大します。ストック型収益の性質を持つため、業績安定化に大きく寄与し、企業価値評価にプラス要因となっています。

4. 新規分野への応用

マスク検査技術は半導体以外にも応用可能であり、先端パッケージや光学分野など新市場の開拓が進められています。技術的な参入障壁の高さから、既存分野同様に高収益を維持できる可能性があります。

これらの成長ドライバーにより、レーザーテックは「高PER・高PBRのプレミアム評価」が正当化されやすい環境にあります。長期的には売上4,000〜5,000億円・営業利益率35%以上を掲げる中計に現実味が増しており、投資家が成長株として注目し続ける理由となっています。

さよすけ
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レーザーテック株のリスク要因と注意点

レーザーテック(6920)は独占的ポジションを持つ一方で、株価に影響を与え得るリスクも存在します。投資判断の際には以下の点を押さえておく必要があります。

1. 半導体市況の循環性

半導体業界は設備投資サイクルに大きく依存しており、好況と不況が数年単位で繰り返されます。レーザーテックは高利益体質で下支えはあるものの、顧客の投資抑制局面では受注の減少が業績に直結するリスクがあります。

2. 顧客集中リスク

主要顧客はASMLや大手半導体メーカーに限られ、特定顧客への依存度が高いのが特徴です。もし発注動向が想定より弱まれば、売上成長にブレーキがかかる可能性があります。

3. 技術革新のスピード

EUVの次世代技術である High-NA EUV への移行が本格化する中で、開発投資が遅れれば競合出現のリスクがゼロではありません。レーザーテックは現状トップシェアですが、技術的優位を維持するための研究開発負担は継続的に大きいといえます。

4. バリュエーションの高さ

現状の株価は PER27.3倍・PBR7.5倍 と、国内製造業の平均を大きく上回る「プレミアム評価」です。業績成長が一時的に鈍化すると、株価調整リスクが他銘柄より大きい点に留意が必要です。

5. 地政学リスクと規制

米中摩擦を背景に、半導体製造装置への輸出規制が強化されています。レーザーテックの装置は最先端プロセスに必須であるため、輸出制限の影響を直接受ける可能性も否定できません。

まとめると、レーザーテック株は「成長ストーリーの明確さ」と「独占的技術」で投資妙味がある一方、市況サイクル・顧客集中・高バリュエーションといった要素がボラティリティを高める可能性があります。長期保有を前提にする場合は、これらのリスクを織り込みつつ、押し目や循環の谷間を狙う戦略が有効と考えられます。

さよすけ
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レーザーテック株の株価評価(DDM・DCF・ミックス係数)

レーザーテック(6920)の理論株価を、株式投資でよく用いられる DDM(配当割引モデル)・DCF(キャッシュフロー割引モデル)・ミックス係数法 の3つの視点から評価します。

1. DDM(配当割引モデル)

  • 年間配当金(予想):318円
  • 予想成長率:3.0%
  • 割引率:7.0%

👉 推定株価は 約8,188円

現在の株価(約17,700円)と比べると「配当ベース」での評価はかなり割高に映ります。ただし、配当性向は25%前後とまだ引き上げ余地があり、将来の増配余地を織り込めば魅力は高まります。

2. DCF(キャッシュフロー割引モデル)

  • FCF(フリーキャッシュフロー):約300億円
  • 予想成長率:3.0%
  • 割引率:7.0%

👉 推定株価は 約8,197円

EUV関連投資の拡大によって受注残は豊富ですが、現状のFCFをベースに割り引くと理論株価は1万円を下回ります。これは、同社が「現状キャッシュフロー」以上に「未来の成長ストーリー」で評価されていることを示しています。

3. ミックス係数法(PER×PBR)

  • PER:27.3倍
  • PBR:7.5倍
  • ミックス係数:205.0

国内製造業の一般的な水準(20〜30程度)を大きく上回っており、まさに「成長株プレミアム」を象徴する数値です。アドバンテストや東京エレクトロンと比較しても、“独占技術を持つ唯一無二の企業”として市場から高評価を受けていることがわかります。

📊 総合評価

DDM・DCFの理論値(約8,200円前後)と比べると、現在の株価(約17,700円)は理論株価の2倍以上で推移しています。

これは「数値だけ見れば割高」ですが、ミックス係数205が示すように、市場は独占的な技術と成長期待を強く織り込んでいます。

投資家にとっては、短期では過熱感リスクに注意しつつ、長期では“プレミアム株”として持ち続ける戦略が有効といえるでしょう。

さよすけ
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レーザーテック株の投資判断まとめ(短期・中長期スタンス)

【短期スタンス】
現在の株価(約17,700円)は、DDM・DCFの理論値(約8,200円)を大きく上回っています。ミックス係数205という極端なプレミアムは、「好材料が出れば買われやすい」一方で「調整局面では下落余地も大きい」という両刃の剣です。

👉 短期的には、決算・市況ニュース・半導体需給の変化に大きく振れるため、ボラティリティを踏まえたリスク管理が欠かせません。

【中長期スタンス】
EUVマスク検査装置で世界シェア100%という独占的ポジションは揺るがず、次世代プロセスの広がりとともに成長余地があります。受注残は数年先まで積み上がっており、「需要が先に見える企業」として安心感があります。

ただし、現在の水準では「成長株プレミアム」がすでに織り込まれており、投資妙味はやや限定的といえます。

【わたしの整理
わたし自身はレーザーテックを短期トレード枠で売買しており、現在は保有していません。

今の株価は割高に見えるため、半導体サイクルが一巡し、調整が訪れたタイミングがあれば改めて検討したい、というのが現時点での立ち位置です。

おわりに──レーザーテック株の魅力と投資判断の総括

レーザーテック(6920)は、EUVマスク欠陥検査装置という独占的ポジションを武器に、半導体微細化の進展を支える「唯一無二の成長株」として市場から高い評価を受けています。

業績は過去最高を更新し、財務基盤も堅実。一方で株価はPER27倍・PBR7倍超と、すでに“成長株プレミアム”を大きく織り込んだ水準にあります。

短期的にはボラティリティに注意が必要ですが、長期目線では依然として魅力ある投資対象です。投資家にとっては、「割高でも買われる理由」と「下落リスク」の両面を理解したうえで戦略を立てることが重要だといえるでしょう。

👉 半導体株はサイクル変動が大きいからこそ、複数銘柄を横比較して投資判断を補強するのがおすすめです。関連記事として以下もご覧ください。

スクリーンホールディングス(7735)の株価分析と投資判断

東京エレクトロン(8035)の株価分析と投資判断

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バリュー投資の人
「理由ある投資」を大切に、 バリュー株や成長企業をコツコツ分析しています。noteでは“思想×投資”の視点も交えつつ、ゆるく発信しています。
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