はじめてのバリュー投資 #2 ── 「安全域」とは?失敗しにくい買い方の土台になる考え方

[はじめに]なぜ“安全域”が大事なのか
投資を始めた頃、5万円ほどの株を買っただけで、数円の価格の動きに一喜一憂していました。上がれば嬉しくて、下がれば不安で。
けれど、いつの間にか、そんな振れにそれほど心を動かされなくなっていて。
「あれ? わたしちょっと成長したかも?」なんて思ったりしました。

こういう振り回されない姿勢がもてるようになったのは、たぶん“ある考え方”が自分の中に染み込んできたからだと思います。
それが「安全域(Margin of Safety)」という考え方でした。
[基礎の考え方] 安全域とは何か~バリュー投資の中核
安全域とは、企業の本質的な価値よりも「十分に安く購入すること」で確保される「ゆとり」のことです。
これは「当てる投資」ではなく、「外れても大丈夫な投資」の点に立った考え方で、実際的なリスクへの備えでもあります。
[数値的な視点] 企業価値より十分に安く購入する
たとえば、ある株式が1,000円の価値があると見積もった場合。
950円で購入するのも悪くないですが、グレアムは700円や600円といった「大きな安全域」に意味を見出しました。
それは、1,000円という価値自体が間違っている可能性があるからです。
誰でも、未来を完璧に計算することはできません。
[不確定性への備え] 計算ミスや予想のブレ
未来の利益、経済、争合など、あらゆる要素が不確定な中で、完璧な価値を決めるのは現実的に難しい。
だからこそ、人はミスをするものだという前提に立つことが大切です。企業の価値評価に誤差があるのは当たり前。未来を完璧に読むことなど誰にもできません。
その不確実性に備えるために、「十分に安く買っておく」ことが、投資における最大の保険になるのです。
[実例] PERやPBRから見る格差
安全域が大きい状態の例:
- PER 10倍以下で利益が平穏
- PBR 1倍を切っているが貯金も十分
- PER×PBRが業界平均より小さい
こういった状況は、「企業価値に対して格差がある」という仮設の可能性を示します。
[思想] グレアムの執着
他の誰よりも未来を読めるわけじゃない。だからこそ、この「今の価格」に気持ちを向けるべき。
人気のある株は、実力以上に高く買われ、不人気な株は、価値以下にまで売られる。その格差こそ、成長の準備なのです。
「強気な予想に賭ける」のではなく、「見誤ったとしても自分を守る」ことに執着したのがグレアムという人物だったのです。

[まとめ] “本質より安く買う”という感覚
- 安全域 = 「価値 > 価格」のゆとり
- 不確定性への備えになる
- グレアムは「外しても安心な投資」を持ち続けた
この「安全域」の視点をもつようになってから、投資との向き合い方がすこしずつ変わってきました。
目先の上げ下げに心を持っていかれることが減り、「自分は“なぜこの株を買ったのか”」という軸に立ち返れるようになった気がします。
損を避けることではなく、“致命傷を避けること”に意識が向くようになったことで、短期のノイズに惑わされず、長期での回復や成長に目を向けられるようになったのです。
小さな揺れには動じず、でも大きなブレには冷静に対応する──そんな判断の軸を、自分なりに持てるようになってきたのかもしれません。
[次回予告] ミックス係数で実際に比較してみよう
次回は、実際の日本株を使って「PER × PBR = ミックス係数」でどれだけ割安かを検証してみたいと思います!

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