ミックス係数10で見つけた割安株シチズン(7762)を分析|はじめてのバリュー投資 #4

ミックス係数でわかる割安株の見つけ方|シチズン株を事例に解説【初心者向け】
株式投資の世界では「割安株を買うことが大切」とよく言われますが、初心者の方にとっては「どの株が割安なのか」を見抜くのは簡単ではありません。
そこで役立つのが PER(株価収益率)× PBR(株価純資産倍率)で計算する「ミックス係数」 です。数値で割安度を直感的に把握できるため、初心者でも「今の株価が企業価値に対して安いのか高いのか」を理解しやすくなります。
今回取り上げるのは、ミックス係数が10.05という低水準を示している シチズン時計(7762)。
配当利回り5%超・財務健全・多角化による安定収益という三拍子が揃いながら、市場では十分に評価されていない可能性があります。
👉 本記事では、ミックス係数の基本からシチズン株の実例までを分かりやすく解説。
「割安株を探すための実践ガイド」として、初心者投資家の方にも役立つ内容にまとめました。
ミックス係数とは?割安株を見極めるための基本指標
株式投資で「割安株」を探すとき、多くの投資家が注目するのが PER(株価収益率) と PBR(株価純資産倍率) です。
- PER(Price Earnings Ratio) … 株価が1株あたり利益(EPS)の何倍で評価されているかを示す指標。低いほど割安。
- PBR(Price Book-value Ratio) … 株価が1株あたり純資産(BPS)の何倍で評価されているかを示す指標。1倍未満なら資産に比べて割安。
この2つを掛け合わせて算出するのが 「ミックス係数(PER × PBR)」 です。
シンプルな式ながら、株価が企業価値に対して割安かどうかを直感的に把握できる便利なツールとして活用されています。

バリュー投資の父・ベンジャミン・グレアムもこの指標を重視し、理論上は 22.5以下であれば割安株の目安 とされてきました。
もっとも、これは戦後の米国株市場を前提とした基準であり、現代の日本株市場では水準が低めに出やすいため、 業種別や同業他社との相対比較 が重要です。
👉 初心者にとっても「PER × PBR」というシンプルな計算式で使えるため、まずは気になる銘柄のミックス係数を算出し、 割安株候補を絞り込む出発点 として活用するのがおすすめです。
シチズンの事業特徴|時計から工作機械まで支える安定収益モデル
シチズン時計(7762)は、時計メーカーとして知られる一方で、実は 多角的な事業ポートフォリオ を展開している点が大きな特徴です。
主力の時計事業
腕時計・壁掛け時計といったコンシューマー向け製品が基盤であり、長年培ったブランド力と販売網によって安定した収益を確保しています。特に国内外でのシチズンブランドの信頼感は厚く、継続的な需要が見込める分野です。
工作機械事業
シチズンの精密加工技術を活かした CNC自動旋盤 は、世界中の製造業から高い評価を受けています。BtoB分野における収益の柱となっており、景気変動の影響を受けにくい安定事業として存在感を発揮しています。
電子部品事業
車載用や産業機器向けの電子部品も展開しており、時計に依存しない収益源を確立。特に自動車分野への供給は、電動化・自動運転時代において成長が期待される領域です。
医療機器事業
さらに、医療分野にも精密技術を応用。時計メーカーの枠を超えた展開で、新たな成長ドライバーとしての位置づけが進んでいます。
海外展開による安定性
売上の一定割合を海外市場が占めており、為替や地域景気の変動を分散。アジア・北米・欧州などに生産・販売拠点を持ち、グローバルな需要に対応しています。
👉 このように 「時計 × 工作機械 × 電子部品 × 医療」 という多角化により、単一事業への依存を抑え、景気変動に強い安定収益モデルを形成しているのがシチズン株の魅力です。
シチズンの割安度を数値で検証|ミックス係数10.05という水準の意味
シチズン時計(7762)の投資判断を語るうえで欠かせないのが、定量評価による割安度の検証です。特に、PERやPBRを掛け合わせた「ミックス係数」は、同社の株価が割安なのかを直感的に把握できる指標として有効です。
シチズン株の主要指標(2025年時点)
- PER(株価収益率):11.42倍 ─ 製造業平均と比較しても低めの水準
- PBR(株価純資産倍率):0.88倍 ─ 1倍割れで「典型的なバリュー株」
- 配当利回り:5.06%(1株配当47円) ─ 高配当株として魅力的
- ROE(自己資本利益率):9.32% ─ 資本効率は堅調
- 営業利益率:6.49% ─ 製造業平均を上回る水準
- 自己資本比率:61.6% ─ 財務基盤は健全
- 営業キャッシュフロー:357億円(前年345億円) ─ 安定的に資金を創出
- ミックス係数:10.05 ─ 割安度が際立つ水準
割安度の解釈
一般的にミックス係数は 15以下で割安株の目安 とされますが、シチズン株は10.05という明確な低水準に位置しています。
さらに、1倍割れのPBRと5%を超える配当利回りを加味すると、「高配当 × バリュー × 財務健全性」が揃った典型的な割安株と評価できます。
投資家にとっての意味
数字を俯瞰すると、シチズン株は「大きな弱点が見当たらない」企業といえます。
- 割安度(ミックス係数10.05)
- 高配当(5%超)
- 安定したキャッシュフロー
この3つが揃っていることから、長期投資家にとっては 「放置できる安心感のある株」としてポートフォリオに組み入れやすい銘柄だと考えられます。
👉 つまり、シチズン株は単なる割安株ではなく、安定性と収益性を兼ね備えた実力株として注目に値します。
シチズンを保有する理由と今後の見立て|長期投資家としての視点
私は現在、NISA口座でシチズン(7762)を保有しています。
この1年間は株価が低迷し、含み損の時期も長く続きましたが、足元では日米の関税合意や需給改善を背景に、株価はじわじわと回復傾向を見せています。

保有を続ける理由
シチズン株を保有する最大の理由は、「安定配当 × 財務健全性 × 多角的事業構造」の3点です。
- 配当利回りは 5%超 と高水準で、NISA口座でのインカムゲイン投資に適している
- 自己資本比率61%超と健全な財務体質
- 時計事業に加え、工作機械・電子部品・医療機器まで展開することで景気変動に強い
短期的な株価変動はあっても、「持ち続けて安心できる銘柄」であることが長期投資家としての安心感につながっています。
今後の見立て
今後もシチズンは、高配当バリュー株としての安定感を維持しつつ、工作機械や電子部品などの成長分野が収益拡大に貢献すると見ています。
また、円安メリットや海外展開の進展も株価押し上げの要因となり得ます。
一方で、急激な成長株のような派手な値上がりは期待しにくいため、「長期でじっくり資産を積み上げるタイプの投資」として位置づけるのが適切だと考えています。
👉 わたしの整理
- NISA口座での長期保有に最適
- 配当を受け取りながら、安定性を重視する投資家向き
- 株価の急騰は狙えないが、「安心感 × 割安 × 高配当」の三拍子が揃った実力株
おわりに|定量評価がシチズンの投資判断に与える安心感
株式投資では「なんとなく良さそう」という直感的な判断も大切ですが、それだけでは市場環境やニュースに左右され、不安定な投資行動になりがちです。
そこで有効なのが、PER・PBR・ミックス係数といった定量指標を活用することです。数値という客観的な基準を持つことで、投資判断に一貫性が生まれ、心理的にも安心感を得られます。
今回取り上げたシチズン(7762)は、ミックス係数が 10.05 と割安圏に位置し、配当利回りも5%超。財務体質も健全で、まさに「数字が裏付ける安心感のあるバリュー株」と言えるでしょう。
👉 投資家にとって重要なのは、「感覚」と「数値」の両輪を意識すること。
- 感覚だけに頼れば、相場のノイズに振り回される
- 数値だけに頼れば、企業の成長ストーリーを見落とす
この両方を組み合わせることで、投資判断はより強固なものになります。
シチズン株は、急激な株価上昇を狙う銘柄ではありません。しかし、安定配当 × 財務健全性 × 割安評価という3点セットが揃った「安心して長期で持てる株」であることは確かです。
👉 今後も「定量評価を味方にしながら、自分なりの投資理由を持って株を保有する」ことが、長期投資家にとって最大の安心感につながると感じています。
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📚 はじめてのバリュー投資シリーズ
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➡ [PER×PBRで割安度を測る「ミックス係数」|はじめてのバリュー投資 #3]
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