なぜ焦って買ってしまうのか?FOMOの正体を行動経済学で解説|投資心理を読み解く #2

株価が上がると焦って買ってしまう投資心理とは?FOMOの正体
株価がグングン上がっているとき、
「今のうちに買わなきゃ」「乗り遅れたくない」──そんな焦りを感じたことはありませんか?
頭では「冷静に判断しなければ」と分かっているのに、つい高値掴みをしてしまい、後から「あれは焦りだったかも」と後悔する。
これは、投資家なら誰しも一度は経験する心理です。
その背景には、FOMO(フォーモー:Fear of Missing Out=見逃すことへの恐れ)という、厄介な感情が潜んでいます。
このFOMOは、多くの投資家が合理的に動けなくなる原因のひとつ。
本記事では、このFOMOを切り口に「なぜ焦って買ってしまうのか」を行動経済学の観点から整理していきます。
投資心理FOMOとは?「乗り遅れる不安」が判断を狂わせる
FOMO(フォーモー)とは Fear of Missing Out の略で、日本語にすると「機会を逃すことへの恐れ」です。
投資の世界では、このFOMOが「冷静な判断よりも焦りを優先させてしまう心理」として現れます。
たとえば──
- SNSで「〇〇株で10万円儲かった」という投稿を見たとき
- 急騰している銘柄をニュースで知ったとき
- 次に上がりそうな株を探してソワソワしているとき
こうした場面で、「自分も今すぐ買わなければ取り残される」と感じてしまう。
それこそがFOMOの入り口です。
本来なら「企業の業績」や「株価水準」といった客観的な基準で判断すべきところを、「みんな儲けている」「今しかない」といった感情に支配されてしまうのが、FOMOの怖さです。
株価が上がると買いたくなる投資心理|FOMOと代表性バイアスの正体
株価が急騰している銘柄を見ると、多くの投資家は「まだ上がりそうだから買いたい」と感じます。
しかし、これは合理的な判断ではなく、投資心理バイアス が働いている結果です。
具体的には次のような思考の流れが典型です。
- 「上がっている=これからも上がる」 と考えてしまう → 代表性バイアス
- 直近の値動きだけに影響される → 直近効果(レコンサイシー効果)
- 乗り遅れたら損をするかもしれない → 損失回避バイアス
つまり、「話題になっているから」「みんな買っているから」といった“空気”が、冷静な投資判断を鈍らせてしまうのです。
本来であれば、株価がすでに30%上昇している時点ではリスクの方が高まっているはず。
それでも焦って手を出してしまうのは、FOMOと複数の心理バイアスが重なって働くからです。
結果として、感情のピークで高値掴み → その直後に反転下落で損失 という典型的な失敗パターンが生まれます。
投資判断を狂わせる心理バイアス|代表性・直近効果・損失回避
株価の上げ下げに直面したとき、私たちは無意識のうちに「心のクセ=投資心理バイアス」に支配されます。
FOMO(乗り遅れたくない心理)を強める代表的な3つを整理します。
- 代表性バイアス
「最近株価が上がっている=今後も上がり続ける」と短絡的に思い込むクセ。実際には将来の値動きとは無関係なのに、過去のパターンを未来に当てはめてしまう。 - 直近効果(レコンサイシー効果)
ごく最近の株価変動だけが強く印象に残り、冷静な判断をにぶらせる。短期の値動きに心が引っ張られ、長期の企業価値を見失いやすい。 - 損失回避バイアス
「買わなかったことで得られたかもしれない利益」を“損”と錯覚する心理。結果として焦りが生まれ、根拠の薄いタイミングで飛びついてしまう。
こうした心理バイアスが重なることで、合理的な投資判断よりも“焦りの感情”が優先される 状況に陥ります。
その結果、冷静に見ればリスクの高い局面でも、「今買わなきゃ」と手を出してしまうのです。
感情のピークで株を買うリスク|FOMOが招く高値掴み
FOMO(乗り遅れ不安)が強まると、投資家は「今こそが特別なチャンスだ」と思い込んでしまいます。
- 「もう間に合わないかもしれない」
- 「次のチャンスはないかもしれない」
- 「いま乗らなきゃ損する」
こうした感情が高まった瞬間こそ、相場がすでにピーク圏にあるサイン である可能性が高いのです。
実際、株価は多くの人が「買わなきゃ」と感じる局面で過熱し、その後に反転下落するパターンが繰り返されてきました。
つまり、感情のピーク=相場のピーク という構図が起きやすいのです。
焦りに突き動かされて高値で買ってしまえば、短期的な下落で後悔する可能性が大きくなります。
冷静な投資判断を守るためには、「今が特別」と思った瞬間こそ危険信号 と意識することが大切です。
投資で焦ったときこそ一呼吸おく|FOMOに流されない習慣
株価が急騰して「今すぐ買わなきゃ」と感じたとき──それは、FOMO(乗り遅れ不安)が感情を支配しているサインです。
このとき、私たちは「自分で判断している」と思い込みながら、実際には感情に反応しているだけの状態に陥りやすくなります。
そんな局面で効果的なのが、「焦ったら一拍おく」習慣 です。
ほんの数秒でも、自分に問いかけることで冷静さを取り戻せます。
- 「これは“株価が上がっているから”買いたいだけではないか?」
- 「この投資判断は、自分の基準に沿っているだろうか?」
- 「半年後の自分も納得できる買い方か?」
こうした問いを投げかけるだけで、衝動的な高値掴みを防ぎ、投資心理の罠から距離を取ることができます。
完璧な投資判断は誰にもできません。
しかし「自分は冷静に考えた」と思える習慣があれば、それだけで投資の質は大きく変わっていくのです。
投資心理とFOMOの付き合い方|焦る気持ちは悪者じゃない
投資をしていると、株価が上がる瞬間に「今すぐ買わないと乗り遅れる」と焦る気持ちが湧くのは自然なことです。
FOMO(乗り遅れ不安)は、決して悪者ではありません。
実際、その直感で利益を得られることもあります。
しかし毎回その感情に振り回されてしまうと、買ったあとにソワソワしたり、結局「高値掴みで後悔する」という失敗に繋がりがちです。
大切なのは、焦る気持ちを否定するのではなく、気づいて距離をとること。
「これはFOMOかもしれない」と認識できれば、一呼吸おいて冷静な投資判断につなげられます。
投資心理を理解して仕組みでコントロールできるようになれば、長期的な資産形成において大きな武器になります。
FOMOは敵ではなく、上手に付き合うべき投資心理のひとつ。
その感情を受け止めつつ冷静に判断する習慣を持つことが、投資で“生き残る力”を育てる第一歩になるのです。
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