株価が上がると買いたくなる理由を行動経済学で解説|投資心理を読み解く #1

投資心理と行動経済学|株価の上げ下げで合理的に動けない理由
株価が上がると「今のうちに乗り遅れないように買いたい」、下がると「もっと下がるかもしれない」と怖くなる──。
投資をしている人なら、多くが経験する心理ではないでしょうか。
しかし、冷静に考えるとこれは合理的ではありません。
株価が上がればリスクも上がるはずですし、下がれば本来は割安な“チャンス”になるはずです。
それにもかかわらず、人はその逆の行動を取ってしまいがちです。
この背景には、人間の脳に組み込まれた“心理的バイアス”があり、行動経済学では「プロスペクト理論」などで説明されています。
今回はその中でも「上がると買いたくなる心理」と「損失回避の心理」に注目し、投資判断の落とし穴をわかりやすく解説します。
価格が上がると買いたくなる投資心理|代表性バイアスと直近効果
株価が1,000円から1,300円に上がった銘柄を見て、「勢いがあるから今買いたい」と思ってしまう──。
多くの投資家が経験するこの心理は、合理的には説明できません。
すでに安値から30%も上昇しており、将来の上値余地は限られるかもしれないのに「買いたい」と感じるのは、代表性バイアスや直近効果と呼ばれる心理的なクセが働いているからです。
人は「上がっている=今後も上がる」と無意識に感じてしまいます。
これは短期的な値動きを未来にも当てはめてしまう思考の錯覚であり、冷静な判断を鈍らせる原因です。
その結果、値上がり直後に飛びつき買いをして、直後の反転下落で損をするという典型的な失敗につながります。
株価が下がると不安になる投資心理|プロスペクト理論と損失回避バイアス
株価が下がったとき、多くの投資家は「これ以上下がったらどうしよう」「なぜ自分が買ったとたんに下がるのか」と強い不安にとらわれます。
この心理は損失回避バイアスと呼ばれ、行動経済学で有名なプロスペクト理論によって説明されています。
人は「100円の得をする喜び」よりも「100円の損をする痛み」を2倍以上強く感じるとされます。
このため、下落局面では「さらに下がるかもしれない」という恐怖が先に立ち、本来は割安でチャンスとなる局面でも買えなくなってしまうのです。
結果として、上がった銘柄には飛びつき、下がった銘柄は買えないという逆転現象が起き、合理的な投資判断を妨げます。
投資心理を理解することは、このような損失回避のクセに気づき、冷静な判断を取り戻す第一歩になります。
投資心理での失敗体験|値上がり後に飛びついて損をした話
過去のわたしも、この心理バイアスに何度も振り回されてきました。
「◯◯関連で注目」と話題になった銘柄を、すでに急騰した後で買ってしまい、その直後に下落。
「自分が買ったから下がるんだ」と本気で思ったこともあります。
これは典型的な投資心理の罠であり、値上がり後に冷静さを失って飛びつく「代表性バイアス」の影響です。
実際に、多くの投資家のみなさまも同じような経験をされたことがあるのではないでしょうか。こうした失敗は投資の世界ではごく自然なことなのです。
わたしは、この経験を通じて「人は合理的に判断できない」という事実を受け入れることができました。
そのうえで行動経済学を学び、損失回避や飛びつき買いに気づける仕組みを持つことが大切だと感じています。
投資心理との向き合い方|感情を知ることで冷静な投資判断を取り戻す
こうした感情やバイアスを完全に消すことはできません。
しかし、投資心理を理解しておくだけで「冷静になれる瞬間」を持てるようになります。
株価が上がって「今すぐ買いたい」と思ったとき、逆に下がって「怖くて動けない」と感じたとき──。
その瞬間に「これはプロスペクト理論や損失回避バイアスかもしれない」と気づくだけで、一呼吸おくことができます。
感情は悪いものではなく、むしろ投資を続けるうえで自然な反応です。
大切なのは、自分の心理を理解して仕組みでコントロールすること。
それが長期的に安定した投資判断につながります。
この「行動経済学×投資心理」シリーズでは、今後も失敗事例や学びを交えながら、感情に左右されないための視点を共有していきます。
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