INPEXは「守りの高配当×攻めの資源株」|配当利回りと成長性を徹底分析

INPEX株の保有理由と見直しの背景|資源価格と高配当のバランス
INPEX(1605)は、日本最大の石油・ガス開発企業として「資源株×高配当株」の代表格といえる存在です。原油や天然ガスの価格変動や地政学リスクに大きく左右される一方、安定した財務基盤と高い配当利回りを背景に、長期投資家からの支持を集めています。
直近では、中東情勢の緊張がやや落ち着き、原油・天然ガス価格も一時的に安定。こうした整理できる局面は限られているため、このタイミングでINPEX株の立ち位置や将来性を改めて検討する価値があると考えました。
配当利回りは約4.5%と高水準。わたし自身にとっても「安心して長期保有できる守りの銘柄」であり、下落局面ではむしろ買い増しを検討できるバリュー株として位置づけています。(わたしの保有状況は以下のとおりです)

本記事では、INPEXの企業概要・財務・将来展望から、株価評価(DDM・DCF・ミックス係数)まで整理し、短期・中長期の投資判断を俯瞰します。
INPEXの企業概要と市場での地位|国内最大の石油・ガス開発企業
INPEX(1605)は、日本を代表する総合エネルギー開発企業であり、原油・天然ガスの開発・生産において国内最大手のポジションを確立しています。国際的にも大規模なプロジェクトを多数保有し、日本のエネルギー安保を支える「基幹銘柄」として重要な役割を担っています。
主な特徴と事業領域
- 天然ガス・原油の開発生産:アジア・オセアニアを中心に世界各地に資源権益を保有。長期契約比率が高く、価格変動リスクを一定程度抑制。
- 国家的な位置づけ:日本政府が黄金株(特別議決権株)を保有し、エネルギー安保上の重要企業として監督。安定株主の存在は長期投資家にとって安心材料。
- 多角化への動き:再生可能エネルギー(太陽光・風力)や、CO2貯留(CCS)、水素事業にも参入。脱炭素トレンドを見据えた布石を打ちつつある。
市場での地位と競合比較
エネルギー開発の分野では、国際メジャー(シェブロン、エクソンモービル、シェルなど)と比べれば規模は小さいものの、日本市場では圧倒的首位。アジア圏に強固な基盤を持つ点は独自の強みです。
また、同業のENEOSホールディングス(5020)が「石油精製・販売」に強みを持つのに対し、INPEXは「資源開発」に特化しており、よりグローバル資源価格と直結した収益モデルを採っています。
つまりINPEXは、「日本国内の資源開発リーダー × 国際資源価格連動型の高配当銘柄」として位置づけられます。

INPEXの財務状況と株主還元方針|高配当と安定経営が魅力
INPEX(1605)は、エネルギー株として典型的な「資源価格に業績が左右されやすい企業」ですが、財務の安定性と高配当政策によって投資家からの支持を集めています。
財務の安定性
- 自己資本比率:約65%
資源開発企業としては極めて高い水準であり、長期プロジェクトや市況変動にも耐えられる強固な財務体質を保持。 - 潤沢なキャッシュフロー
天然ガス・原油の長期契約から安定収益を確保。近年は3,000億円規模のフリーキャッシュフローを安定的に創出。 - 資産規模
世界各地に資源権益を持つため、資産内容は国際的に分散され、リスクの一極集中を避けている。
配当方針と株主還元
- 配当予想:年間90円(2025年12月期)
現在の株価(約2,077円)ベースで 配当利回りは約4.5% と、高配当株として魅力的。 - DOE(株主資本配当率)3.0%以上を継続方針
利益変動の大きい資源株ながら、DOEをベースとした配当政策を掲げることで「安定配当」を確保。 - 自社株買い
機動的な自社株取得も実施しており、株主価値向上に向けた積極的な還元姿勢が見られる。
投資家にとっての魅力
資源価格に左右されやすいビジネスモデルを持ちながらも、高配当+財務健全性+株主還元強化という組み合わせで、長期投資家にとって安心感のある銘柄といえます。
INPEXは「資源株=ハイリスク」というイメージを覆しつつあり、配当で守りながら、市況次第で攻めにも転じられる株 として注目されます。

INPEXの将来展望|原油・天然ガス依存と脱炭素への挑戦
INPEX(1605)の将来性を考える上で欠かせないのが、原油・天然ガス価格との強い連動性です。資源株の宿命として市況に業績が左右されやすい一方で、長期的にはエネルギー安保・脱炭素ニーズという新しい成長軸も見えてきています。
原油・天然ガス価格との連動
- 価格上昇=業績好調
原油・ガス価格の上昇は収益を大きく押し上げ、直近でも中東情勢や円安進行が追い風となり利益を押し上げています。 - 価格下落=即時業績悪化
一方で、価格が急落すれば業績に直ちに影響する構造であり、投資家は「資源価格のボラティリティ」に常に注意を払う必要があります。
需要構造の変化と成長分野
- アジアの天然ガス需要
アジアを中心にLNG(液化天然ガス)の需要が底堅く、長期契約比率も高いため、以前ほど「市況まかせ」の構造からは改善されつつあります。 - 再生可能エネルギー・CCS(水素事業含む)
INPEXはCO₂の地下貯留(CCS)、水素サプライチェーン構築、再生可能エネルギー発電などへ投資を加速。石油・ガス依存からの脱却を模索しています。 - 中長期ビジョン
「INPEX Vision 2035」に基づき、2050年カーボンニュートラルを見据えた戦略を展開中。現行の「Vision 2022」はその第一段階であり、次の成長戦略(2030年以降)が注目されます。
投資家にとってのポイント
INPEXの将来は、依然として「資源価格」が最大のドライバーですが、同時に脱炭素×エネルギー安保という新しいテーマ株としての側面も持ち始めています。
短期は資源市況、長期は低炭素社会への転換という“二層構造の成長シナリオ”をどう評価するかが投資判断のカギとなるでしょう。
INPEXの投資リスク|資源価格の変動と政策リスク
INPEX(1605)は高配当かつ財務の安定性が魅力の一方で、資源株特有のリスクを抱えています。投資家は「守りのバリュー株」として保有する際にも、このリスク要因を冷静に押さえておく必要があります。
資源価格の変動リスク
- 原油・天然ガス価格下落
最大のリスクはやはり資源価格の急落です。原油やガスの市況が崩れれば、収益は短期で直撃を受け、配当余力にも影響が出ます。 - 為替の影響
収益はドル建て比率が高いため、円高に振れると業績を圧迫します。特に資源価格下落と円高が同時に進む局面ではダブルパンチになりやすい点に注意が必要です。
政策・規制リスク
- 環境規制・炭素税の強化
各国での環境政策が進むと、採算性の低下や新規開発の抑制要因になり得ます。特にカーボンニュートラル政策が強まるほど、原油・ガス事業への逆風は増す可能性があります。 - 開発認可・地政学リスク
新規油田・ガス田の開発には政府認可が不可欠で、地政学リスク(中東情勢など)が許認可の遅れや操業停止につながる可能性があります。
投資家にとっての注意点
INPEXは日本政府が「黄金株」を保有する戦略的企業であるため、国家エネルギー政策の影響を受けやすい一方、国家的に守られる立場でもあります。
投資家は、資源価格のボラティリティに耐えられるか、脱炭素へのシナリオをどう見るかを明確にした上でポートフォリオに組み込むことが重要です。
INPEX株の株価評価(DDM・DCF・ミックス係数)
INPEX(1605)の理論株価を、投資分析でよく用いられる DDM(配当割引モデル)・DCF(キャッシュフロー割引モデル)・ミックス係数法 の3つの視点から算出しました。
1. DDM(配当割引モデル)
- 年間配当金(予想):90円
- 予想成長率:1.0%
- 割引率:7.0%
👉 推定株価:約1,515円
配当をベースにすると現状株価(約2,077円)よりやや低めに出ます。ただし、DOE方針(株主資本配当率3%以上)に支えられ、今後の安定配当や増配余地を考慮すれば「控えめすぎる評価」ともいえます。
2. DCF(キャッシュフロー割引モデル)
- FCF(フリーキャッシュフロー):約3,000億円(近年平均値)
- 予想成長率:1.0%
- 割引率:7.0%
👉 推定株価:約4,011円
DCFでは現在株価を大きく上回る結果となり、資源価格に依存するとはいえ「キャッシュフロー創出力の高さ」が割安評価を示唆しています。
3. ミックス係数法(PER×PBR)
- PER:6.4倍
- PBR:0.98倍
- ミックス係数:6.3
国内製造業の標準水準(20〜30程度)を大幅に下回る「明確な割安圏」に位置しています。
📊 総合評価
理論株価は以下のように整理されます。
- DDM:約1,515円(やや控えめ)
- DCF:約4,011円(強気評価)
- ミックス係数:6.3(割安圏)
現在の株価(約2,077円)はDCF理論値よりもかなり低く、「数値的にはまだ割安」といえる水準です。
一方で、DDMではやや下回る結果も出ており、これは資源株特有のボラティリティを織り込んだ保守的な前提の影響です。
総じて、INPEXは 高配当利回りと堅調な財務を背景に、市場が十分に評価しきれていない可能性があるバリュー株 と整理できます。

INPEX株の投資判断まとめ(短期・中長期スタンス)
【短期スタンス】
INPEX(1605)の株価は、原油価格・天然ガス価格・為替動向に強く影響されるため、短期的にはボラティリティの高い銘柄です。
一方で、配当利回り4.5%前後という高水準は大きな魅力であり、下落局面では「高配当を得ながら押し目を拾う」投資戦略が有効です。
👉 短期的には、決算発表や資源価格の急変動を意識しつつ、配当狙いのスタンスで分散エントリーを検討するのが現実的といえるでしょう。
【中長期スタンス】
中長期的に見れば、INPEXは日本のエネルギー安保を担う戦略的企業であり、**安定したキャッシュフロー+高い自己資本比率65%**を背景に強固な財務基盤を築いています。
さらに、カーボンニュートラルを目指した「INPEX Vision 2035」に基づき、
- CO2地下貯留(CCS)
- 水素事業
- 再生可能エネルギー
といった新分野への投資も進めており、将来的には「資源株×環境テーマ株」として再評価される可能性があります。
👉 中長期では、安定的な高配当+脱炭素関連への布石を兼ね備えた“攻守バランス型のバリュー株”として、長期保有に向いた銘柄といえます。
【わたしの整理】
わたし自身はINPEXを「守りの高配当株」と位置づけていますが、原油価格の上昇局面では「攻めのリターン」も期待できる点を評価しています。
今後も配当を享受しつつ、株価調整時には追加購入も視野に入れたいと考えています。
📝 おわりに──INPEX株の総括と関連記事のご案内
INPEX(1605)は、原油・天然ガスという景気や地政学に左右されやすい要素を抱えながらも、高い配当利回り・健全な財務基盤・長期戦略(Vision 2035) を備えた「守りと攻めの両方を兼ね備えたバリュー株」です。
短期的には資源価格に連動した値動きに注意が必要ですが、中長期的にはエネルギー安保の中核企業であり、安定配当を享受しながら成長余地を狙える銘柄といえるでしょう。
投資家にとっては、「資源株は不安定だから避ける」のではなく、資産ポートフォリオの一部に“安定高配当株+資源株のヘッジ要素”として組み込むという視点が有効です。
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