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BPSとは?1株あたり純資産で企業の「土台の強さ」を見抜く投資判断の基本

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BPSとは?1株あたり純資産で企業の「土台の強さ」を見抜く指標

株価が高いのか安いのかを判断するとき、多くの投資家が注目するのは PER(株価収益率)EPS(1株あたり利益) など「利益」を基準にした指標です。

しかし、もうひとつ大切なのが 「資産ベースで見たときの企業価値」 です。

BPS(Book Value Per Share) は、企業が保有する純資産を株主1人あたりに割り当てた数字。

つまり、「もし会社を解散したら、1株あたり理論的にどれくらい戻ってくるか」を表す指標です。

企業の“財務的な強さ”や“安定性”を測るうえで欠かせない基礎指標といえます。

この記事では、

  • BPSの意味と計算式
  • 活用場面と投資判断へのつなげ方

を、やさしく・具体的に解説していきます。

BPSの基本と計算式|1株あたり純資産の求め方と意味

BPS(Book Value Per Share) とは、「1株あたりの純資産」を意味します。

企業が持つ資産から負債を引いた“純資産”を、発行済株式数で割ることで算出します。

この数値は、株主1人あたりにどれだけの資産が割り当てられているかを示すもので、企業の財務的な厚みを測る代表的な指標です。

▶ 計算式

BPS = 純資産 ÷ 発行済株式数

たとえば、純資産が1,000億円で発行済株式数が1億株の企業なら、

👉 BPSは 1,000億 ÷ 1億株 = 1株あたり1,000円 となります。

これは、理論上「会社を清算したときに1株あたりどれくらいの資産が残るか」を示す数値でもあります。

▶ BPSが意味するもの

  • BPSが高い企業:資産が厚く、財務基盤が安定している。倒産リスクが低く、長期投資に向きやすい。
  • BPSが低い企業:負債が多い、または資産の圧縮・赤字などで財務が弱っている可能性。

BPSは、単なる「数字の大きさ」ではなく、資産構造の健全性や企業の安全性を読み解くためのツールとして使われます。

👉 BPSは、企業の財産価値を1株単位で見える化した指標。数字の背後にある“財務の強さ”を読み解くことが投資判断の第一歩です。

BPSでわかること|資産の厚みと株価の関係を読み解く

BPS(1株あたり純資産)を見ると、その企業がどれだけの「資産」を持っているかを株主目線で把握できます。

とくに、株価との比較によって企業の割安度や安全性を判断できる点が重要です。

▶ 株価とBPSの関係(PBRで確認)

PBR = 株価 ÷ BPS(1株あたり純資産)

この関係から、株価と資産価値のバランスを読み解けます。

  • 株価 < BPS(PBR1倍未満)  
    → 会社が保有する資産よりも安く株を買える状態。  
    → いわゆる「資産株」や「割安株」として注目される水準。
  • 株価 > BPS(PBR1倍超え)  
    → 資産だけでなく、収益力や将来の成長性が市場で評価されている状態。  
    → 成長期待が高い企業に多く見られます。

▶ BPSの推移でわかる企業の安定性

長期的にBPSが積み上がっている企業は、利益を内部留保し、財務基盤を強化していると考えられます。

一方で、BPSが減少している場合は、赤字や資産圧迫、減損などの影響が出ている可能性もあります。

BPSの推移を見ることで、「企業がどのくらい安定的に資産を積み上げてきたか」がわかるのです。

▶ 「資産の厚み」が示す意味

BPSは、EPS(利益)と異なり「稼ぐ力」ではなく「守る力」を表す指標です。

景気変動に強い企業や、倒産リスクの低い企業ほどBPSが安定して積み上がる傾向にあります。

そのため、BPSは長期投資家にとって“企業の信頼度”を測る土台ともいえます。

👉 BPSは、企業の資産構造と株価のバランスを読み解くツール。PBRとの比較や推移を追うことで、割安度と安定性の両方を見極められます。

BPSをどう活用する?|投資判断での見方と実践ポイント

BPS(1株あたり純資産)は、企業がどれだけの資産を持っているかを示すだけでなく、割安株を見つけるための出発点にもなります。

財務の厚みを測る「守りの指標」として、長期投資家にとって欠かせない存在です。

▶ 1. PBRと組み合わせて割安度を判断する

PBR = 株価 ÷ BPS

PBRが1倍を下回る場合、株価が企業の純資産よりも安く評価されていることを意味します。

つまり「資産より安い株」であり、バリュー株(資産株)を探すときの基本指標となります。

ただし、業績不振や事業縮小などで評価が下がっているケースもあるため、低PBR=即買いではなく背景の確認が大切です。

▶ 2. BPSの推移を見る

BPSが毎年積み上がっている企業は、内部留保を厚くして財務を強化している証拠です。

安定して資産が増えている企業は、景気変動に強く、減配リスクも低め。

BPSの右肩上がりは、長期的な経営の健全性を表すサインといえます。

▶ 3. EPSとのバランスを確認する

BPSが厚くても、EPS(利益)が伴わなければ株主価値は伸びません。

BPSは「資産の厚み」、EPSは「稼ぐ力」。

この2つをセットで見ることで、資産を活かして稼げる企業かどうかが見えてきます。

両者のバランスが取れている企業ほど、持続的に株主価値を高めやすい傾向があります。

▶ 4. データサイトで推移を確認する

BPSは、企業IRや財務データサイト(例:IRBANK など)で簡単に確認できます。

複数年の推移をチェックすることで、企業の財務体質や内部留保の傾向を視覚的に把握できます。

👉 BPSは「守りの強さ」を見る指標。PBR・EPSと組み合わせて、資産の厚みと収益力を立体的に評価することが投資判断の精度を高めるカギです。

まとめ|BPSの積み上がりが語る「企業の信頼度

BPS(1株あたり純資産)は、企業がどれだけの純資産を株主1人あたりに持っているかを示す指標です。

この数字が積み上がっている企業ほど、内部留保を厚くし、財務の安定性を高めているといえます。

つまり、BPSの継続的な増加は「企業の信頼度」そのものです。

一方で、BPSが増えていても利益が伸びていない場合は、資産は増えても稼ぐ力が弱いというサインでもあります。

BPSは「資産の厚み」、EPSは「稼ぐ力」。

この2つをセットで追うことで、守りと攻めのバランスを持つ企業を見つけやすくなります。

投資判断の本質は、“数字の意味を考えること”。

単なる割安・割高ではなく、なぜBPSが増えているのか/減っているのかという背景を読み解くことで、企業の実像が見えてきます。

👉 BPSの推移は、企業の財務体質と経営の信頼度を映す鏡。EPSとあわせて「資産×利益」の両面から分析することで、長期的に強い投資先が見えてきます。

次回予告|ROE(自己資本利益率)で「資本の効率」を読み解く

次回は、株主から預かった資本をどれだけ効率よく利益に変えているかを示す ROE(自己資本利益率) を取り上げます。

BPSが「資産の厚み」を表すなら、ROEは「その資産をどれだけ有効に活かして稼げているか」を測る指標です。

企業の成長性・収益性を同時に見る、投資家必須の分析ツールを解説します。

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バリュー投資の人
「理由ある投資」を大切に、 バリュー株や成長企業をコツコツ分析しています。noteでは“思想×投資”の視点も交えつつ、ゆるく発信しています。
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