見落とされがちな「実力株」──スクリーンHD(7735)に眠る投資チャンス

スクリーンホールディングス株の保有理由と見直しの背景
スクリーンホールディングス(7735)は、半導体製造工程の中でも重要な「洗浄装置」で世界トップシェアを誇るメーカーです。特に微細化が進む先端プロセスにおいては、洗浄工程の重要性が増しており、同社の技術力は業界で高く評価されています。
2025年春、米中摩擦や市況調整を背景に半導体製造装置株が軒並み下落する中、同社株も短期的に押し目を形成。AI・HPC・車載向け半導体など、長期的な成長分野での装置需要を見据え、タクティカル(短期戦略)枠としてエントリーしました。

現在株価は約12,000円前後で、含み益はおよそ24万円。短期的な節目を迎えており、今後の値動きや半導体市況の変化を踏まえ、利益確定を含めた判断が必要な局面です。
この記事では、スクリーンHDの事業構造・財務基盤・成長ドライバー・リスク要因を整理し、株価の割安/割高評価と投資戦略を詳しく解説します。
スクリーンホールディングスの企業概要と半導体市場での地位
スクリーンホールディングス(7735)は、半導体製造工程の「洗浄装置」で世界トップクラスのシェアを誇る日本企業です。ウェーハ表面の微細な異物や汚染を除去する工程は、先端半導体の高い歩留まりを実現するうえで不可欠であり、同社の装置は最先端ロジックから先端メモリまで幅広く採用されています。
主要顧客にはTSMC・Samsung・Intelなど世界有数の半導体メーカーが名を連ね、5nm・3nm世代の先端プロセスでも高い採用実績があります。
特に、EUVリソグラフィーを用いた工程では洗浄精度の要求水準がさらに高まるため、同社の技術優位性が長期的な競争力の源泉となっています。
また、半導体以外にも、印刷機器やディスプレー製造装置など多角的な事業を展開しており、市況変動時の収益安定化に寄与しています。もっとも、売上の約8割は半導体関連事業が占めており、同分野の世界的な設備投資動向が業績を左右する構造です。
スクリーンホールディングスの財務状況と株主還元方針
スクリーンホールディングス(7735)は、装置産業でありながら自己資本比率が62.7%と高水準を維持し、財務の健全性が際立っています。有利子負債はごくわずかで、現金および流動資産の比率が高く、景気後退局面でも柔軟な資金対応が可能です。
営業利益率は22.8%、ROEは23.5%と高水準を維持。これは洗浄装置分野における世界的な高シェアと、先端プロセス対応製品の高付加価値化によるものです。特にEUV対応装置や微細パターン対応機種は単価が高く、利益率の押し上げ要因となっています。
✔︎財務面の主な特徴
- 高い自己資本比率:77.4%で財務リスクが低い
- 無借金経営:景気変動期でも資金調達コストが発生しない
- 安定した高収益:営業利益率22.8%、ROE23.5%
- 研究開発への積極投資:売上の約7%をR&Dに充当
株主還元については、配当性向35%以上を基本方針としており、利益成長に応じて増配を実施。加えて、自社株買いも柔軟に行う方針を掲げています。半導体製造装置メーカーの中では配当利回りは中程度ですが、業績拡大に伴う増配余地が期待されます。
この健全な財務体質と安定的な株主還元方針は、中長期での投資対象としての魅力を高めています。
スクリーンホールディングスの将来展望|AI・HPC・先端パッケージが牽引する成長シナリオ
スクリーンホールディングス(7735)は、半導体需要の拡大を背景に、今後も成長が見込まれる分野に的確に事業を展開しています。
特に注目すべきは、AI・HPC(高性能コンピューティング)や車載向け半導体の需要増です。生成AIや自動運転といった分野では、微細化・高密度化が進む中で、高精度な洗浄装置や成膜前処理装置が不可欠であり、同社の技術力が強みとして発揮されます。
さらに、先端パッケージング技術(2.5D/3D実装) に対応した装置需要が急拡大しており、同社は次世代製造工程に適応した製品開発を加速。既存の主要顧客であるTSMCやSamsung、インテルなどの大型投資計画からも恩恵を受けやすい立ち位置です。
同社は中期経営計画(2025〜2027年度)において、2027年度に売上高5,000億円・営業利益率20%以上 を目標に掲げています。業界全体でも、半導体製造装置市場は2030年に25兆円規模へ拡大すると予測されており、スクリーンHDはこの成長波に乗るポジションを確立しています。
✔︎成長を支える主なドライバー
- AI・HPC需要の急増による先端工程装置の需要拡大
- 先端パッケージ(2.5D/3D実装)向け装置市場の拡大
- 車載半導体・パワー半導体分野の堅調な投資
- 高精度洗浄技術の国際的競争力
- 主要顧客による長期的な設備投資計画
こうした背景から、今後5〜10年の長期スパンで安定的な成長が見込まれ、装置ポートフォリオの拡充と海外市場での販売力強化によって、収益の持続的拡大が期待されます。
スクリーンホールディングスのリスク要因|半導体サイクル・地政学・為替変動を分析
スクリーンホールディングス(7735)は、半導体製造装置分野で高い競争力を持つ一方、外部環境や政策要因による影響を受けやすい事業構造です。長期保有を検討する投資家は、以下の主要リスクを押さえておく必要があります。
1. 半導体市況のサイクル変動
半導体製造装置の需要は、2〜4年周期で好況と調整を繰り返す傾向があります。特に近年の生成AIブームに伴う先端投資が一巡した場合、受注が急減する可能性があります。
2. 地政学リスク・輸出規制
主要顧客は中国・台湾・米国など国際的に分布しており、米中摩擦や輸出規制の影響を受けやすい構造です。先端装置は規制対象となりやすく、政策次第で売上減少リスクが顕在化する可能性があります。
3. 為替変動リスク
輸出比率が高く、円高局面では売上・利益が圧迫されます。為替ヘッジは実施していますが、長期的な円高トレンドは利益率低下につながるリスクがあります。
4. 設備投資前倒しの反動
顧客の半導体メーカーが短期間に巨額投資を行った場合、その反動で翌期以降の発注が減少することがあります。特に生成AI関連投資は変動幅が大きいため、需給の谷間には注意が必要です。
総合評価
スクリーンホールディングスは、洗浄装置を中心としたニッチ分野での強みと広範な顧客基盤により、市況変動への耐性は一定程度あります。しかし、完全に外部要因の影響を回避することはできません。投資判断では、半導体サイクルの転換点や政策動向を見極めた上でのエントリー戦略が不可欠です。
スクリーンホールディングスの株価評価|DDM・DCF・ミックス係数で分析する理論株価と割高・割安水準
スクリーンホールディングス(7735)の現在株価(約12,000円)が割安か割高かを判断するために、配当割引モデル(DDM)・割引キャッシュフロー法(DCF)・ミックス係数(PER×PBR)の3つの手法で理論株価を試算しました。
1. DDM(配当割引モデル)による株価評価
- 年間配当金(予想):280円
- 予想成長率:2.0%
- 割引率:7.0%
- 理論株価:約5,712円
→ 現在株価と比較すると、約52%の割高水準です。
2. DCF(割引キャッシュフロー法)による株価評
- FCF(フリーキャッシュフロー):約500億円(直近安定水準)
- 予想成長率:2.0%
- 割引率:7.0%
- 理論株価:約10,040円
→ 現在株価と比較すると、やや割高な位置ですが、極端な乖離はありません。
3. ミックス係数(PER × PBR)による評価
- PER:13.85倍
- PBR:2.72倍
- ミックス係数:37.67
→ 一般的な割安基準(22.5)を上回るものの、半導体装置系の成長性を考慮すれば中立に近い水準です。
総合評価
3つの評価モデルのうち、DDMでは割高度合いが大きく(理論値比+52%)、配当成長だけを基準にすれば現在株価は高めです。
一方で、DCFやミックス係数では成長性を織り込んだ水準に収まっており、半導体装置需要の拡大シナリオを前提とすれば「やや割高だが許容範囲」と判断できます。
つまり、配当利回り重視の長期インカム投資家には魅力が薄く、成長シナリオを見据えたキャピタルゲイン狙いの投資家には許容可能な水準です。
投資方針の軸次第で評価が分かれる位置といえます。
スクリーンホールディングスの投資判断|短期と中長期のスタンス
【短期スタンス】
スクリーンホールディングス(7735)の現在株価(約12,000円)は、DCF理論値(約10,040円)をやや上回る水準で推移しており、足元では半導体装置需要の持ち直し期待が株価を押し上げています。
短期的には米国半導体株の動向や生成AI関連投資のニュースフローが株価変動要因となりやすく、急騰局面では利益確定売りが出やすい点に留意が必要です。
新規エントリーの場合は、決算発表や業績予想の上方修正といったモメンタム材料を伴うタイミングに絞るのが有効でしょう。
【中長期スタンス】
同社は洗浄装置分野で世界トップシェアを誇り、AI・HPC需要や次世代半導体(Gate-All-Around構造など)の普及に伴う装置更新需要が長期成長を支える構造です。
財務体質も良好で、自己資本比率62.7%、有利子負債は軽微。景気後退局面でも投資余力を維持しやすい強みがあります。
DCFやミックス係数では許容範囲の評価となっており、中長期投資家にとっては押し目買い戦略が有効。特に市況調整や為替の円高局面でのエントリーが妙味です。
【わたしの整理】
スクリーンホールディングスは、同じ半導体製造装置大手の東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)と比べ、株価の上昇ペースが相対的に緩やかで、成長株としては出遅れ感があります。
このため、現時点では短期的な利益確定よりも保有継続の妙味が大きいと判断しています。
半導体サイクルの回復局面で洗浄装置需要は後追いで伸びる傾向があるため、今後の業績モメンタムが株価に反映される余地は十分。
他銘柄が過熱感から調整に入る局面でも、同社は比較的安定した推移を見せる可能性が高く、「中期ホールド+押し目での追加投資」という方針を維持します。
おわりに──スクリーンホールディングス株の魅力と投資判断の総括
スクリーンホールディングス(7735)は、半導体製造工程で不可欠な洗浄装置において世界トップクラスのシェアを持ち、安定した財務基盤と高い利益率を誇る装置メーカーです。
東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)と比較すると、株価上昇ペースが相対的に緩やかで、成長株としては出遅れ感が見られます。
この「出遅れ」は、半導体サイクルの回復局面で後発的に評価される可能性を示唆しており、短期的な過熱感が弱い分、中期的なリターン余地が残っていると考えられます。
今後もAI・HPCなど先端半導体分野の投資拡大が続けば、洗浄装置需要は底堅く推移する見込みです。
一方で、半導体市況の調整や米中摩擦、為替変動などの外部リスクは避けられません。したがって、「売る理由」と「再び買う条件」を事前に決めた上での中期ホールド戦略が有効です。
👉 半導体株はサイクル依存度が高いため、複数銘柄を横比較して投資判断を補強するのがおすすめです。関連記事として以下もご覧ください。