ミックス係数で割安株を見抜く方法|はじめてのバリュー投資 #3

PER×PBRで見抜く割安株のサイン|初心者でもわかるミックス係数の活用法
株式投資を始めたばかりの方にとって、「割安株」や「過小評価されている日本株」といった言葉は少し抽象的に感じるかもしれません。
しかし、PER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)を掛け合わせた「ミックス係数」 を使えば、数字で直感的に「割安かどうか」を見抜くことができます。
本記事では、
- ミックス係数の仕組みと計算方法
- 割安株を探すときの活用ポイント
- 日本株の実例比較(割安株と割高株の違い)
を整理し、初心者でもすぐに使える「数字で見抜く割安株の見方」を解説します。
👉 今日から「割安株を数字で判断する視点」を持ちたい方におすすめの入門記事です。
ミックス係数とは?PER×PBRで見抜く日本株の割安度
株式投資で「割安株」を探すとき、PERやPBRといった指標はよく使われます。
しかし、これらを単独で見るだけでは「本当に割安なのか」を判断しにくいケースがあります。
そこで有効なのが PER(株価収益率)×PBR(株価純資産倍率)=ミックス係数 という考え方です。
- PER(株価収益率) … 株価が1株利益(EPS)の何倍まで買われているか
- PBR(株価純資産倍率) … 株価が1株純資産(BPS)の何倍で評価されているか
この2つを掛け合わせることで、企業の収益性 × 資産価値を一度に把握でき、単独の指標では見えにくい「割安さ」を浮き彫りにできます。
バリュー投資とミックス係数の関係
「バリュー投資の父」と呼ばれる ベンジャミン・グレアム も、割安株を見つける際にミックス係数の考え方を活用しました。
一般的には 22.5以下なら割安圏 とされますが、これは1940〜50年代の米国市場を前提とした目安。
👉 現代の日本株市場では、より低い水準(例:10〜15以下)が割安株の目安になるケースが多く、
特に中小型株や地方企業では5以下という“超割安”の銘柄も散見されます。
日本株で学ぶ割安株と割高株の違い|PER×PBRで実例比較
PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、そしてそれらを掛け合わせた ミックス係数 を使うと、日本株の割安度や割高度が直感的に見えてきます。ここでは、実際の上場企業2社を比較しながら「割安株」と「割高株」の違いを整理していきます。
割安株の実例:TOYO TIRE(トーヨータイヤ)
- PER:9.7倍
- PBR:1.1倍
- ミックス係数:10.7 → 割安株の水準
TOYO TIREは、自動車用タイヤを主力とするメーカーで、財務安定性と配当利回りの高さから「高配当株」としても注目されています。
PER・PBRともに低水準で、ミックス係数も10台と小さく、市場から過小評価されている可能性が高い銘柄といえるでしょう。
👉 投資家にとってのポイント:収益・資産に対して株価が割安に放置されている可能性があり、「安全域」が確保されやすい。
割高株の実例:アドバンテスト
- PER:44.3倍
- PBR:15.0倍
- ミックス係数:664.5 → 超割高水準
半導体検査装置の世界的メーカーであるアドバンテストは、今や「グロース株」の代表格。高い成長期待を背景に、PER・PBRが極端に高い水準で推移しています。
投資家は「将来の成長ストーリー」を前提に株を買っており、数字だけを見ると明らかに割高ですが、それでも市場で支持されている状況です。
👉 投資家にとってのポイント:成長シナリオが崩れれば急落リスクが大きい一方で、期待が続く限りは高値でも買われ続ける。
割安株と割高株の違いをどう見るか
この比較から分かるのは、「数字の差」=「投資家の期待値の差」 であるという点です。
- 割安株(TOYO TIRE):利益や資産に比べて株価が低く、長期投資家にとっては安全域を確保しやすい。
- 割高株(アドバンテスト):収益や資産を大幅に上回る株価がついており、将来成長に賭ける投資。
👉 まとめ:PER・PBR・ミックス係数を並べて比較することで、数字に隠れた「市場の期待」と「株価の背景」が見えてきます。
割安株と割高株の本質|数字の裏にある将来性とのギャップを読む
PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、そしてミックス係数は「割安株か、割高株か」を数字で示す便利な指標です。
しかし本当に重要なのは “その数字の背景にある将来性” を見抜くことにあります。
数字だけでは見えない投資判断の落とし穴
- 低PER・低PBR企業:利益や資産に比べて株価が割安でも、「将来性が乏しいから安い」ケースもある。
- 高PER・高PBR企業:数字だけを見れば割高でも、「成長シナリオが強固」なら市場が正当化して買い続ける場合がある。
👉 つまり 「割安=買い」や「割高=避ける」とは限らない のです。
投資家が考えるべきは「なぜ市場がこの株をこの水準で評価しているのか」という問いです。
割安株に潜む「過小評価のチャンス」
財務や利益が堅実なのにPERやPBRが低い企業は、市場に過小評価されている可能性があります。
市場参加者が見落としている成長シナリオがあるなら、株価が企業価値に追いつく過程で大きなリターンを得られるかもしれません。
割高株に潜む「期待先行リスク」
一方で、高PER・高PBRの企業は、将来成長への期待で株価が買われています。
しかし期待が裏切られた瞬間に急落するリスクがあり、数字の高さ自体がリスク要因にもなり得ます。
👉 結論:数字は“入り口”。その先にある「市場が織り込んでいる未来」と「実際の企業の将来性」にギャップがあるかどうかを見抜くのが投資家の腕の見せ所です。
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ミックス係数まとめ|割安株を見つけるための出発点にすぎない
PER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)を掛け合わせた ミックス係数 は、株式投資における「割安株を探すシンプルなツール」です。
数値が小さいほど割安度が高く、特に日本株市場では 15以下が一つの目安 とされています。
ミックス係数が示す投資のヒント
- PERが低い企業 → 利益に対して株価が安い可能性
- PBRが低い企業 → 純資産に対して株価が安い可能性
- PER×PBR(ミックス係数)が低い企業 → 割安株の候補
👉 ただし、これはあくまで “出発点”。
「割安に見えるのはなぜか?」という背景を読み解かなければ、本当に投資妙味のある銘柄かどうかは判断できません。
割安株を見抜くための次のステップ
- 同業他社や市場平均との比較で、割安の度合いを相対的に把握する
- 財務の健全性(自己資本比率やキャッシュフロー)を確認する
- 成長戦略や経営方針が数字と整合しているかを検証する
👉 ミックス係数は「投資家の第一フィルター」。その後の企業分析で本質的な価値と将来性を確認することで、初めて“安全域を持った投資”につながります。
次回予告|割安株の事例分析──ミックス係数が低い日本株を深掘り
この記事では、PER×PBRで算出する ミックス係数 の基礎と活用法を整理しました。
次回はさらに踏み込み、実際の日本株の事例分析 を通じて「本当に割安といえる銘柄」を見ていきます。
次回の内容
バリュー投資の実践で役立つ“数字の読み解き方”を具体例で解説
ミックス係数が低い企業の実例を取り上げ、指標の裏にある背景を徹底検証
PER・PBR単体では見えない「本物の割安株」と「見せかけの割安株」の違い

👉 「数字だけではなく背景まで掘り下げる」ことで、 長期投資にふさわしい銘柄をどう見極めるか を具体的に学べる回になります。
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📚 はじめてのバリュー投資シリーズ
➡ [失敗しにくい長期投資と割安株の選び方|はじめてのバリュー投資 #1]
➡ [“安全域”とは?失敗しにくい買い方の土台|はじめてのバリュー投資 #2]
➡ [配当戦略の基本と高配当株の見極め方|はじめてのバリュー投資 #4]
➡ [負けにくい投資をつくる「分散」の力|はじめてのバリュー投資 #5]
➡ [配当戦略の基本「利回り・配当性向・DOE」|はじめてのバリュー投資 #6]
➡ [高配当株の落とし穴と減配リスクの見極め方|はじめてのバリュー投資 #7]