はじめてのバリュー投資 #3──PER×PBRで「割安」は測れる?ミックス係数で見る企業評価の考え方

[はじめに]数字で“見えてくる”瞬間がある
割安だとか、過小評価されているとか──そう言われても、最初はなんとなくピンとこないものです。
でも、PERとPBRを掛け合わせていくつかの企業を並べてみたとき、「あ、これは確かに安そうだ」と感じる瞬間がありました。
今回はその“ミックス係数”を使って、実際の企業を比較しながら「数字で見る割安さ」の感覚を掴んでいきます。
[基本の考え方]ミックス係数とは?──PER×PBRの視点
- PER(株価 ÷ EPS):利益に対して株価が何倍か
- PBR(株価 ÷ BPS):純資産に対して株価が何倍か
この2つを掛け合わせた「PER×PBR」は、バリュー投資の父・グレアムが使っていた指標の一つで、現在では「ミックス係数」として活用されています。
グレアムの理論では、この値が22.5を下回ると割安圏という目安になります。
ただし──
この22.5という数字は1940〜50年代の米国市場を想定したもので、現代の日本市場にはそのまま当てはまりません。あくまで「企業の質や背景を理解するための補助線」として活用するのが現実的です。

たとえば、
- PER 10 × PBR 1.0 → ミックス係数=10.0(割安)
- PER 25 × PBR 2.0 → ミックス係数=50.0(割高)
このように、ミックス係数は「数字の組み合わせ」から相対的な割安さを捉えるための出発点になります。
[比較してみる]日本株2社で見る“割安さ”の違い
今回は、以下の2社を例にとって比較してみます。
✅ TOYO TIRE(財務安定・配当高め)
- PER:9.7倍
- PBR:1.1倍
- ミックス係数=10.7 → 割安
✅ アドバンテスト(成長企業・株価上昇中)
- PER:44.3倍
- PBR:15.0倍
- ミックス係数=664.5 → 超割高(成長前提)
並べてみると、同じ日本株でもこれだけの開きがあることがわかります。
そしてその背景には、収益の安定性や市場の成長期待、あるいは不安といった、異なる前提があります。
ミックス係数は、「割安=買い」や「割高=避ける」という単純な図式ではなく、“スタート地点”として背景を考えるための手がかりになるのです。
[本質に迫る]見るべきは「将来性とのギャップ」
- 財務・利益が堅実なのにPERやPBRが低い = 市場に過小評価されている可能性
- 高PER・高PBR = 期待先行の評価、または資本効率・成長率が高い証拠
大切なのは、
「なぜ市場はこの株をこの価格で評価しているのか?」
この問いに向き合うことです。

TOYO TIREは指標的には割安ですが、それをどう受け取るかは投資家次第。
アドバンテストは極めて高い指標ですが、成長シナリオが市場に支持されている限り、それが正当化される場面もあるでしょう。
数字だけで判断せず、「数字の意味」に踏み込むことが、投資の精度を高めてくれます。
実際に企業ごとの背景まで踏み込んで分析した記事をnoteで公開しています。
興味があれば、ぜひこちらもご覧ください。


[まとめ]ミックス係数は“考えるためのツール”
- ミックス係数(PER×PBR)は「割安さ」の目安
- 22.5以下で割安とされるが、時代・市場によって基準は異なる
- 重要なのは「なぜその数値なのか」を考えること
数字は、ただの答えではなく「問いのきっかけ」。
その数字が何を意味し、なぜ市場はそう評価しているのか──
そこに踏み込むことで、投資は“判断”から“洞察”へと変わっていきます。
[次回予告]実際に“割安っぽい企業”を深掘りしてみる
次回は、実際にわたしがピックアップした企業の中から、 ミックス係数が低く、しかも中身がしっかりしている会社を1社ご紹介する予定です。
少しずつ“見る目”を育てていきましょう。